北朝鮮、2012年「強盛大国」実現目指し食糧節約か
昨年、北朝鮮では過去最高の豊作となった上に、備蓄された食糧も十分にある。それにもかかわらず、北朝鮮当局は世界中にコメの支援を求めている。その理由は何か。
(1)2012年の強盛大国実現に向けて備蓄か
かつて北朝鮮では1995年から97年にかけて、100万人以上の餓死者が出た。これは「苦難の行軍」と呼ばれているが、直後の98年からは住民向けに「2012年に強盛大国の門戸を開く」と宣伝し始めた。高麗大学のチョ・ヨンギ教授は「現在、北朝鮮政権は“12年強盛大国”という幻想で住民の不満を和らげようとしている。12年に大々的に行われる宣伝用イベントや、住民に与えるプレゼントなどを準備するために、食糧を備蓄しておく必要があるのだろう」と語った。ある脱北者は「北朝鮮住民が求める生活水準はそれほど高いものではない。白米と肉のスープさえ食べられるのなら、誰が権力を握っても忠誠を尽くすだろう」と話した。
(2)軍に優先的に配給
北朝鮮は昨年初め、軍糧米が保管された2号倉庫を一部開放し、住民の食糧難を解消しようとした。しかし「先軍政治」を強調する北朝鮮にとっては、兵士たちに食べさせることが最優先だ。朝鮮人民軍の様子について、最近脱北者たちが証言した内容によると、ここ数年間に海外からの支援が途絶えたことで、軍の食糧事情も非常に悪化しているという。かつて咸鏡北道の海岸沿いの哨所(兵士の詰め所)に勤務していたある脱北者は「昨年は1日3食すべてがジャガイモだったこともある」と話す。統一部(省に相当)の関係者は「一般住民なら市場で食糧を調達できるが、兵士たちはそうはいかない。備蓄米以外にも軍糧米を最大限確保するため、海外に食糧支援を求めているのではないか」と述べた。
(3)本当に食糧難なのか
北朝鮮の昨年の食糧生産量は、統計上の数値ではそれほど悪くはない。しかし肥料不足などが原因で、穀物が生産されてもあまり実がついていない可能性も考えられる。以前は韓国から毎年20万トンから30万トンの肥料が支援されていたが、これも08年から中断している。肥料さえあれば、単位面積当たりの生産量は1.5倍にまで増えるという。北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋は「表面的にはよく実ったように見えても、中に実が入っていないものが多いという話をよく耳にする」と語った。
アン・ヨンヒョン記者