任期満了に伴う広島市長選(4月10日投開票)は、新人8人(公認1、無所属7)が立候補を予定し、構図がほぼ固まった。3期12年務めた秋葉忠利市長(68)の「たすき」を受け取るのは誰か。主要政党の事情も絡み、激しい前哨戦を展開している。3月27日の告示まで1カ月。市民の選択の日が近づいている。【寺岡俊】
自民党県連から出馬を要請された前厚生労働省中央労働委員会事務局長、松井一実氏(58)は企業誘致による経済活性化を唱える一方、五輪招致など個別課題には触れない。「市民の議論を尊重する市政を目指す」と掲げる。東区出身だが、知名度向上が鍵。自民党は推薦は出していないが、市議らは「結束」を強調して支援する。
前副市長の豊田麻子氏(44)は、女性団体や秋葉市長の支援者らの出馬要請を受けた。政党推薦は求めないが、民主、社民両党が支援し、連合広島も協調する。専門の情報技術分野を中心に、初の女性副市長として秋葉市政を支えた幹部の一人。しかし、五輪招致には「20年にはこだわらない」と述べるなど独自色もうかがえる。
前回は次点だった元市議、大原邦夫氏(61)は再挑戦。前回は民主、自民の一部が支援に回ったが、今回は草の根選挙に徹する。五輪招致には反対。技術革新に結びつく研究者の育成や待機児童解消、広島市に国連のアジア本部を置くことなどを目指すとしている。
市議2期目の桑田恭子氏(49)は市職員の人件費削減、市長退職金ゼロ、議員定数を55から40程度への削減も掲げる。五輪招致は反対、広島西飛行場の市営化にも否定的だ。地盤の佐伯区を中心としたネットワークに加え、郵便局長会の協力も仰ぐ。
唯一、政党が公認する共産党の大西理氏(45)は28日に正式な出馬会見を開く。共産は過去2回の市長選で独自候補を立てなかった。今回、市民団体を通じた擁立作業が難航。党単独に切り替えた。大西氏は核兵器廃絶や子どもの医療費無料化などを訴える構えだ。
昨年8月に立候補を表明した市民団体代表、呉羽山人氏(60)は「真の地域主権を確立したい」と意気込む。建築コンサルタント、田中正之氏(51)は、医療やIT産業の育成などに力を入れる考えと訴える。建設コンサルタント会社員、前島修氏(37)は瀬戸内海の魅力を引き出した広島経済の再生などを訴える。(写真は立候補・擁立表明順)
毎日新聞 2011年2月26日 地方版