インドネシア特使団機密窃盗:練習機輸出への影響は?

10年間で2兆ウォンを投入し開発

性能は良いが価格が高く、海外輸出は挫折続き

 韓国製の超音速高等練習機T50の輸出は、韓国軍やメーカーはもちろん、李明博(イ・ミョンバク)大統領にとっても宿願の事業だ。

 「ゴールデンイーグル」という別名を持つT50は、韓国航空宇宙産業(KAI)が米国のロッキード・マーチン社と1997年から共同開発してきた練習機で、開発には10年の歳月、2兆800億ウォン(現在のレートで約1545億円、以下同)の資金がつぎ込まれた。練習機としては初めて超音速の性能を有したのに加え、電子装備も優秀で、当初は世界の高等練習機市場に最大1000機ほど輸出できるとみられていた。韓国空軍では約90機のT50を導入する計画だが、これだけでは利益が出ないため、必ずや輸出を成功させなければならない状況にある。問題は、1機当たり2500万ドル(約21億円)もする価格だ。T50の強力なライバルに当たるイタリア・アエルマッキ社のM346に比べ、性能は優れているものの価格が高く、いつも苦杯を喫してきた。「練習機として使うにはあまりに高い機能を備えており、価格が跳ね上がった」という話も出た。

 李大統領は08年1月、大統領当選者の身分でアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の皇太子と会談し「T50を購入してもらいたい」という書簡を送ったが、成果は挙げられなかった。09年にはポーランドを訪問し、T50セールスに乗り出したが、またもや特段の成果はなかった。昨年はシンガポールを主要20カ国・地域(G20)招請国に含めるなどして望みを託したが、これも失敗に終わった。

 その後李大統領は、インドネシアへの輸出にかなりの希望を託してきた。延坪島砲撃の事後処理で忙しかった昨年12月、李大統領は、別の日程は取り消しながらもインドネシア・バリ島訪問は強行した。「北朝鮮の挑発直後に保養地訪問とはどういうことか」という非難もあったが、インドネシアのユドヨノ大統領からの招きを拒絶した場合、T50輸出をはじめとする両国の協力に障害が生じかねないことが理由だった。この訪問で「防衛産業分野での具体的な協力を強化する」という合意がなされ、今回のインドネシア経済協力特使団の来韓も決定した。

 韓国政府の消息筋は「今回の特使団訪韓の際、両国の国防長官会談でT50輸出問題に良い形で一区切りつけようとしたが、ことは完全にねじれてしまった」と語った。防衛産業内外からは、T50が極めて優秀な航空機であることは確かだが、あまりに高価な仕様で輸出が容易ではない上、今回の事件まで起こったことで、さらなる困難に直面する可能性が高いという懸念の声が出ている。

ユ・ヨンウォン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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