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社説:NZ地震 直下型の脅威改めて 

 ニュージーランド南島のクライストチャーチを襲ったマグニチュード(M)6.3の地震は、時間とともに被害の大きさが明らかになり、直下型地震の脅威を見せつけた。まだ連絡が取れない日本人も多い。日本の国際緊急援助隊も現地で活動を開始した。政府は安否確認と情報収集に全力を挙げ、ニュージーランド政府にできる限りの支援をすべきだ。負傷者や家族のケアにも万全を尽くさなければならない。

 地震国のニュージーランドでは過去にも度々地震が発生している。クライストチャーチは歴史的な街並みや治安の良さなどで観光地や語学研修先として人気が高く、3000人近い邦人が滞在しているが、昨年9月にもM7.0の地震が起きた。

 被害が大きいのは、市中心部にある語学学校「キングス・エデュケーション」が入居したCTVビルだ。6階建ての建物が全壊し、日本人学生らを含む多数の被災者が取り残されているとみられ、一部の遺体も搬出されている。

 日本の援助隊もここで活動している。余震が続く厳しい状況ではあるが、日本隊は豊富な経験とノウハウを持つ。ニュージーランドをはじめ現地入りした各国の救助隊とも連携し、一人でも多くの被災者を救い出してほしい。食糧や医療品などが不足しているのであれば、日本からも援助したい。

 経済のグローバル化に伴い、海外在住の日本人は増え、09年は約113万人に上る。自然災害はいつ、どこで起きるか分からず、海外で邦人が巻き込まれるケースも目立つ。在留邦人は自分の安全を守るため、できる範囲での備えが求められるとともに、こうした事態を想定した政府の対策もより重要性を増す。

 一方、日本で地震が起きた場合は居住する外国人の被害把握が課題となる。普段から外国人とコミュニケーションを密にし、連絡を取れるようにしておくことが望まれる。

 今回、富山市の富山外国語専門学校の学生らの被災の一報は、教員から送られた携帯電話のメールによってもたらされた。男子学生の一人はがれきの下から日本の兄に電話し、救出につながった。被災地は通信状況が悪く、連絡を取るのが困難になりがちだが、海外での万が一の時の連絡方法として、携帯やメールの有効活用法を検討していくことも必要だろう。

 同じ地震国として教訓も多い。CTVビルの周囲の建物は倒壊を免れているのに、このビルの被害が際立つ。近い将来、東海、東南海、南海地震の発生が予測される日本でも、住宅や学校などの耐震化工事が十分に進んでいない現実がある。改めて巨大地震への備えを見直したい。

毎日新聞 2011年2月25日 2時31分

 

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