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社会保障改革:集中検討会議 自公時代に議論回帰へ 野党「政権交代の意味ない」

 ◇税・社会保障の集中検討会議

 税と社会保障の一体改革を検討する政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」(議長・菅直人首相)は5日、初会合を開き、6月の政府案策定に向けた議論をスタートさせる。議論の土台になるのが、自公政権下で設置された税と社会保障改革に関する二つの会議の報告書だ。政府は野党を超党派の協議に引き込む思惑もあって、自公政権時の議論の流れを引き継ぐ姿勢を鮮明にしており、野党側は「自公時代と同じでは、政権交代の意味がない」と反発を強めている。【谷川貴史、坂井隆之】

 一体改革を担当する与謝野馨経済財政担当相は1月14日の就任会見で「麻生内閣でつくった会議の報告書の基調は、民主党政権下でも受け継がれている」と発言した。念頭にあるのは、08年の「社会保障国民会議」と09年の「安心社会実現会議」の報告書だ。

 福田内閣で発足した「社会保障国民会議」の特徴は、「小さな政府」を掲げた「小泉改革」に決別し、社会保障制度の機能強化と安定的な財源の確保を訴えた点にある。報告書は、無年金問題への対応や少子化対策の充実などを掲げ、15年度には消費税率換算で少なくとも3・3~3・5%程度の新規財源が必要との試算を示した。

 「安心社会実現会議」は、「国民会議」の議論を踏まえた上で、08年秋以降の経済・金融危機で失業などが社会問題化したことを受け、雇用確保にも力点を置いた。雇用・少子化対策の強化により、高齢者対策に偏重しない「全世代切れ目のない安心保障」を唱え、消費税を含めた税制改革のスケジュールも示すべきだと指摘。超党派による「円卓会議」の設置を求めた。

 民主党政権は政権交代時に消費税増税を封印し、無駄削減による財源確保を訴えていたが、現在は逆に野党に対し税と社会保障改革の協議を呼びかける立場に転じている。一体改革議論の下地づくりをするために昨年、政府が設置した「社会保障改革に関する有識者検討会」の座長には、「実現会議」で中心的役割を果たした宮本太郎北海道大大学院教授を起用。検討会の報告書は「実現会議」をほぼ踏襲した。

 さらに「国民会議」座長の吉川洋東大大学院教授▽「実現会議」座長の成田豊電通名誉相談役▽「有識者検討会」座長の宮本氏はいずれも今回の「集中検討会議」のメンバーに選ばれた。自公政権時に税と社会保障の議論を主導した与謝野氏と柳沢伯夫元厚生労働相も「集中検討会議」に参加。民主党政権発足から約1年5カ月を経て、自公政権時代の政策に回帰した格好だ。

 これに対し、公明党の山口那津男代表は1日の会見で「前政権が組み立てた政策に『菅政権が白旗を揚げた』と指摘せざるを得ない」と批判。消費税増税という難しい政治課題を前に、野党から今後「露骨な抱きつき戦略」との反発が強まる恐れもありそうだ。

毎日新聞 2011年2月3日 東京朝刊

 

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