政治【from Editor】「開国」の意味を教えて2011.2.3 07:45

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【from Editor】
「開国」の意味を教えて

2011.2.3 07:45

 菅直人首相が国会開会の施政方針演説で「平成の開国」という言葉を繰り返し使った。年頭会見などでも発言していた言葉ではあるが、それにしても重い言葉を、いとも軽々と使っていると思った。少なくとも戦後日本の経済苦闘史をほとんどご理解いただいていないようである。

 演説では、日本はこの150年間に「明治の開国」と「戦後の開国」を成し遂げました、と述べた。が、正確にいえば日米和親条約を結んだ江戸幕府が開国時の政権であり、「江戸幕末の開国」というべきだろう。もっとも、それによって内乱(戊辰戦争)が起き、幕府が倒れ、明治という時代が開かれる。

 明治は欧米文明の取り入れによって発展するが、開国は引き継いだだけだ。辞書で「開国」を引くと「(1)初めて国を建てること。建国(2)外国と交通を始めること。対義語は鎖国」(広辞苑)とある。

 「戦後の開国」もおかしい。戦後、日本は無条件降伏から米国中心の占領軍が乗り込んできて、経済的には財閥解体やらドッジライン(財政金融引き締め政策)など復興の妨げとなる諸施策を打ち出す。朝鮮戦争が起こって結果的に日本経済は復興への勢いをつかむが、復興後は米国の保護貿易政策と対日市場開放の要求が断続的に行われた。こうしたことを「戦後の開国」というのだろうか。

 市場開放は昭和60年ころから、日米構造協議の名のもとで、いろいろと行われた。米国は「自動車をもっと買え、スーパーコンピューターを買え、公共事業にも参加させろ、保険市場に参入させろ」などなどあの手この手で日本に迫った。また、多くの国際協定・条約に参加している。

 金融の市場開放(金融ビッグバン)をやった結果、銀行や証券、生損保が潰れた。ハゲタカ・ファンドがどっと入ってきた。「失われた20年」となり、グローバリズム(地球規模での自由経済展開)の波にのみ込まれた。失望した国民は自民党を見捨てた。単純で安易な「開国」は、政権交代の引き金にしかならないのではないか。幕末のように。だから「開国」の意味と意義を、歴史を踏まえて説明してほしい。

 少なくとも経済面では、外交と内政は紙の表裏の関係だ。内政に戦略なくして外交は成り立たない。それもなく、「開国」だけを叫んだとしてもむなしい。やはりこの内閣は、言葉の重みを熟慮しない“軽チャー”政権なのだろうか。(編集委員 小林隆太郎)

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