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読む政治:小沢・民主元代表、離党も検討 影響力、じわり低下(その2止)

(左から)田中角栄元首相、菅直人首相、小沢一郎・民主党元代表
(左から)田中角栄元首相、菅直人首相、小沢一郎・民主党元代表

 <1面からつづく>

 ◇小沢系の大量新人、選挙に弱点

 数は力--。最盛期は約140人の自民党最大派閥を率いた田中角栄元首相の権力掌握術は小沢一郎民主党元代表にも引き継がれている。「飲み食いして仲間作りをしろ」。小沢元代表は側近らに口を酸っぱくして言う。約150人を擁し、数のうえでは「田中軍団」をしのぐが、強制起訴後の影響力はじわりと低下している。

 「ちょっとここに座りなさいよ」。強制起訴された1月31日夜の鳩山由紀夫前首相のグループ幹部との会合で、小沢元代表が隣に呼んだのは、鳩山政権で首相補佐官を務めた中山義活経済産業政務官だった。

 鳩山グループは昨年9月の党代表選で小沢元代表を支持し、「小鳩」連携は今も続く。しかし、中山氏は小沢元代表の強制起訴を織り込み、鳩山グループの「小沢色」を薄め、「中間派色」を強めようと動いていた。小沢元代表支持を繰り返す鳩山氏に「静かにしたほうがいい」と、小沢元代表と距離を置くよう進言した。

 小沢元代表に呼ばれた中山氏は「一番大事なのは和の精神だ」と党内融和を訴えたが、小沢元代表は「当たり前の話だよな」とつれなく答えた。中山氏を隣に呼び寄せたのは、小沢元代表のさりげないけん制だった。

 小沢元代表は昨年の起訴議決後、党内での求心力低下を回避するための引き締め策を打ってきた。昨年11月には衆院新人議員の支持グループ「北辰会」(約50人)を作り、動揺する新人議員らとの夜の会合を繰り返してきた。側近議員は「小沢さんは飲んで食うことを重視している。選挙でカネを配るのと同じことだ」と説明する。

 だが、衆院新人議員に影響力を持つ小沢元代表の強みは弱点にも転じる。内閣支持率が低迷する中、追い込まれた菅直人首相が衆院解散・総選挙に踏み切れば、大量落選が予想されるのは選挙基盤の弱い新人議員だ。「首相の解散カードは野党には効き目が薄くなりつつあるが、小沢グループにはまだ有効だ」と党関係者は言う。

 小沢元代表は菅首相と戦った昨年9月の党代表選では所属国会議員のほぼ半数の200人から支持を得た。

 「小沢先生を総帥(そうすい)とする小沢軍団200人の力を抜きにして民主党がしゃんとしていけるわけがない」。国民新党の亀井静香代表は5日、広島県尾道市での民主党参院議員の会合で小沢元代表を前に訴えた。が、党内には「小沢元代表の影響力低下はまぬがれない。『小沢軍団』の結束もぐらつくだろう」との声がじわりと広がる。

 ◇自前の首相候補も不在

 小沢グループには自前の有力な首相候補がいないことも弱点といえる。田中派が、二階堂進、金丸信、竹下登各氏らベテランと、小沢元代表ら後に竹下派「七奉行」と呼ばれる中堅を擁した層の厚さとは対照的だ。

 グループ幹部には奥村展三、鈴木克昌、松木謙公各衆院議員らがいるが、いずれも3期で閣僚経験はない。小沢グループが影響力を維持するには首相候補を担ぎ続ける必要がある。だが、小沢元代表が今春の政変を予測しながらも、次期党代表選への対応には「そのときにはちゃんとだれかいる」(グループ幹部)と頼りない。

 小沢グループは昨年6月の代表選でグループ内からの擁立はもとより、候補一本化にも失敗した苦い経験がある。次回も「中間派」に白羽の矢を立てる可能性がある。

 鳩山グループから自立を図る小沢鋭仁前環境相は小沢元代表と近い原口一博前総務相、首相グループの荒井聡前国家戦略担当相と1月27日、郵政改革についての勉強会に参加した。小沢前環境相の側近議員は「小沢系を引きつけ、菅グループも取り込む狙い」と説明。「中間派」として次期代表選出馬への布石とも見られている。

 しかし、小沢グループ内で支持が分かれれば、逆に「草刈り場」にもなるだけ、との警戒感も強い。【葛西大博、朝日弘行】

毎日新聞 2011年2月6日 東京朝刊

 

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