2011-02-25T06:58:08
●井出正一さん
景気回復という最重要課題はもちろん、内外に山積の問題を解決するより、“小沢追放”によって権力維持を目指しているとしか思えない菅政権。ある週刊誌は内ゲバの果てに連続リンチ殺人を犯した連合赤軍になぞらえていたが、ホント、“あさま山荘”内閣という表現はピッタリだ。さて、きょう登場の井出正一さんは“自社さ連立政権”の村山内閣で厚生大臣を務めた元さきがけ代表だ。さきがけ時代はスッカラ菅と同じ釜の飯を食った井出さん、いまどうしているのか。
JR長野駅からクルマで15分。「長野県酒類販売」の本社で会った井出さん、「夜だったら外で一杯やるんだけど……」とニヤリと笑い、記者を応接室に招き入れた。
井出さんの実家は「橘倉酒造」なる元禄時代から続く造り酒屋。慶大卒業後、20年ほど家業に携わった。だから、勝手知ったる業界に復帰したわけだ。
「政界を引退して実家に戻ったら、オレの体には永田町の雑菌がついてるといって、酒蔵に入れてくれなかったんだよ。それで卸会社にお世話になることにしたんだ。景気? 正直、厳しいね、それもかなり。信州は酒どころっていわれるけど、今の時代、造るのも売るのも大変なんだよ。そもそも若い人が酒を飲まなくなったしね。最近、派手な酔っぱらいなんてほとんど見なくなったでしょ。これも草食化の一種なのかねぇ、ハハハ」
与謝野“死に神大臣”は72歳。71歳の井出さん、政治家としてはまだやれる年齢だ。かつて議席を争った民主党最高顧問の羽田孜元首相は今期限りで引退を表明しており、再度の出番があるんじゃないか。
「とんでもない。もうオレの時代じゃないよ。それに地縁だ血縁だっていう時代でもない。今の日本は政治の近代化が何より必要なんだ。だから、(去年7月の参院選で)甥が(みんなの党公認で)出馬したときも、最初、“ここから出るなよ”って言ったんだ」
●「永田町の雑菌がついてる」と引退後、実家の酒蔵に入れてもらえず
さて、井出さんは“幻の”政権交代を成し遂げたものの、96年の総選挙、98年の参院選と続けて落選。志半ばで政界引退を余儀なくされた。
その志を継いだのが、かつて同じ釜の飯を食い、かわいがっていた鳩山前首相や菅首相である。当然、一昨年夏の政権交代時は「高揚感でいっぱいだった」という。ところが、今やあの熱気はまったく消えうせた。民主党政権は国民の期待を裏切り続け、菅政権は泥舟に成り果てた。
「確かにあの頃の気分じゃないな、ワタシも社会の雰囲気も。どうしてこんなことになってしまったのか。ウ~ン、政権交代を達成したときに、自分たちはこれから何でもできると思ってしまったところに間違いがあったんだろうね。鳩山クンの沖縄基地問題にしても、沖縄の人たちの期待が膨らむ発言をしておいて、最後に放り投げちゃったし」
「ただ、時代の変化もあると思うよ。例えば、20年くらい前の国民アンケートでは〈信用できるもの〉の順位で、政治家の公約は下から2番目だった。つまり、国民は政治家の公約が実現するとはほぼ考えていなかった。ところが、今や公約はすなわち最重要課題だ。それは当然といえば当然なんだが、マニフェストだから即実行、というのはなかなか難しいよ。菅首相? さきがけで一緒になったとき、こんな大所帯が初めてだって喜んでいたのを彼は覚えてるかなぁ。当時はよく勉強もしていた。それに比べて今は……と、まあ、政治の話はこのぐらいにしておいてよ」
あきれ果てて、モノを言う気力もなくなったというところか。
(日刊ゲンダイ2011年2月4日掲載)
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