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党首討論:詳報

 菅直人首相と自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表との党首討論の詳報は次の通り。

 ◇6月に財源措置提示--菅首相

 ◇八百長相撲に乗れぬ--谷垣氏

 谷垣禎一氏 首相の就任以来、初の党首討論。議論すべき話題がたまっており、今後、頻繁にこの場で議論したい。まず社会保障と税の一体改革。総理のスケジュール感は「4月に社会保障の改革案をまとめる」「6月に税制抜本改革を含んだ成案をまとめる」「9月前後にマニフェスト(政権公約)を見直す」「消費税率等を上げる前には解散し国民の信を問う」。それでよろしいか。

 菅直人首相 野党としては党首討論に出たが、総理では初。討論は一方的な質問だけでなく、建設的な討議になるよう互いに努力させてもらいたい。社会保障と税の一体改革は大きなスケジュール感を持つべきだ。高齢化で毎年1兆円、社会保障費用が増え、子育てや若者層の雇用も十分に保障されず、孤立化した社会にもなっている。一体改革はどの内閣、誰が総理大臣でも避けて通れない課題だとスケジュール感として申し上げる。話があった点については、ほぼおっしゃる通り。4月に向け社会保障のあるべき姿を示し、6月には社会保障と税の一体改革の案を示す。マニフェストは既にやれたもの、実行しているもの、実行が難しいものを分析し、どうしても難しいものは国民に説明し理解を得たい。

 谷垣氏 もう少し端的に答えてほしい。順序が逆。マニフェストの破綻がいろんなことの背後にある問題だ。この処理を後回しにするのは順序が違う。我が党の野田毅(衆院)議員が予算委員会で「4月に案をまとめられなければ責任を取るのか」と聞き、菅さんはうなずいた。責任を取り(首相を)辞めるのか。

 首相 順序が逆というのは理解できない。やらなければならないのは一刻も早くしっかりした案をつくり、実行に移すこと。逆に聞きたい。4月に社会保障のあるべき姿を示し、6月に税と一体の改革案を示した時、谷垣総裁も協議に乗ってくれるのか。

 谷垣氏 税の問題、昨年の参院選で総理は「10%という自民党の案も一つの参考」と。ところが秋に引っ込め、また持ち出した。本気でやる気があるか聞いたが、答えないのは残念。もう一つ確認したい。6月に税の改革を含む成案を得るなら、4月の社会保障の案は積算の根拠になる詰まったものなのか。

 首相 参院選で消費税について「自民党の提起した10%を参考にしたい」と言ったのはその通り。しかし秋に引っ込めたというのは間違い。与野党で協議しようと言ったつもりだが、やや唐突で、すぐに消費税を引き上げるという誤解を招いた。参院選で厳しい結果となり、もう一度党として協議したいということ。私にだけ答えろと言うのではなく、答えてほしい。そういう案を私たちが出した時、与野党協議に乗ってもらえるのか。

 谷垣氏 もう少し具体的にスケジュールを聞き、答える。強弁したが、国民はそう思っていない。職を賭すのか、きちっとしたものを出すのか聞いたが答えない。非常にあいまい。4月、税の積算根拠になるようなものを出すのか答えてほしい。

 首相 今、私は分かりやすく国民にお伝えした。社会保障のあるべき姿について、どれだけ財源が必要で、どのような形を取れるか、そういうことについても案を示す。それが出た時に協議に乗るのか、ぜひ答えてほしい。

 谷垣氏 4月にまとめる社会保障改革案は、税の積算根拠になるような具体的なものになるのか。

 首相 社会保障のあるべき姿は多岐にわたっている。医療・介護・年金や、子育てや雇用、孤立した人々の居場所を確保することも社会保障に入っている。そういうあるべき姿について4月にきちんと提案する。財源的な措置をどうするかは、さらに議論を深めて6月に提示する。

 谷垣氏 09年度税制改正法は、11年度中に消費税を含む税制抜本改革案を提出するよう義務付けている。来年の通常国会には提出しなければならない。年金も12年度に財源措置が必要。(消費税率引き上げは)12年度以降かと思うが、首相は衆院任期後に引き上げるとも発言している。どう理解すればいいか。

 首相 税制改正法は自公政権時代に成立したが、これに沿って進めていきたい。11年度末までに何らかの法的な対応をしなければならない。(税率引き上げの)実施時期や選挙のこともお尋ねかもしれないが、消費税を含む大きな税制改正を実施する場合は、少なくとも実施する前には国民の判断を仰ぐ。11年度末に法案提出してそれが成立したとしても、税と社会保障の共通番号制度の整備などいろんなことが予想される。実施する段階に至った場合には、それよりも前に、必ず国民の判断を仰ぐと明確に話している。

 ◇公約、ごまかしでない--菅首相

 ◇年金一元化、民主案を--山口氏

 谷垣氏 民主党のマニフェストの基本構造は、消費税(率の引き上げ)はやらない前提に立っているはずだ。マニフェスト違反に野党も片棒を担げと言っていることになる。そういう八百長相撲には乗れない。消費税率引き上げを含む新しい公約を作り、国民の声を聞くことが必要だ。自民党は昨年の参院選で「当面10%」と掲げた。民主党もまじめにやれば方向性は違わないだろう。選挙の後は勝者も敗者もお互いに国民の信を得てやることができる。それがこの問題を解決する一番の近道だ。社会保障と税について、我々の考え方は既に明確なので、早く追いついてもらいたい。

 首相 今の話を聞くと、結局のところは4月や6月に改革案を出しても議論には乗れないと。衆院解散して、それが終わらないと乗れないということになる。解散すればその後の政局がどうなるかは誰にも分からない。つまりは、長年積み残した課題を先送りすることになるので、この段階できちんとした案を出す。(自民党は)「案がないから議論に乗れない」と言ってきた。言っていることが違ってきている。私は昨年の参院選で「自民党が提起した10%が参考」と話した。そして厳しい選挙結果を受けて改めて考えた。やはり、単に税の議論を先行させても国民の理解を得られない。手順、順序が重要だ。まずは社会保障のあるべき姿を提示し、それを実現する上でどんな財源・税制が必要になるかを併せて提案し、理解を得なければならない。そのために4月と6月という日程を決めて(与野党協議の)提案をしている。そういう議論もしないまま、まず解散だというのは、国民よりも党の利益を優先させた提案だ。

 谷垣氏 「急がば回れ」という言葉をご存じだろう。大事なのは国民との信頼関係だ。問題は案が国民との信頼関係から見てどうかだ。マニフェストの基礎を踏みにじるようなものだったら、「マニフェスト違反の共犯になってくれ」というようなもので、冗談じゃない。

 首相 10年のマニフェストには「早期に結論を得ることを目指して、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」と提案した。既に参院選の時の私のマニフェストできちんと申し上げている。国民に対するごまかしだとは当たらない。

 谷垣氏 国民はそう思ってない。明らかに衆院選の時のマニフェストは、消費税はやらないのが大前提だった。結局マニフェストに根本的欠陥がある。財政破壊のマニフェストだ。小沢(一郎)さんの証人喚問問題はいいかげんに解決して乗り越えていこう。菅さんがリーダーであるなら「自分がきちっと解決をつける」。ここで言ってほしい。

 首相 政策選択であり、もっといい政策が何かを示されるべきだ。私は政治とカネの問題は越えていかなければならない大きな課題だと思ってやってきた。小沢元代表の件は、私も国会での説明は必要だとの認識を持っている。しかしどのように扱うかは国会で決めてもらわなければならない。今、小沢元代表に「もう一度話をしたい」と申し入れており、近々きちっと話し合って方向性を定めていきたい。

 山口那津男氏 民主党のマニフェストがいかに中身のない、いいかげんなものかが明らかになってきた。年金制度の一元化は「大変難しい」、最低保障年金の中身は「具体的な数字が固まっていない」と言った。与野党協議は、公明党は昨年12月に具体案を提案したが与党・民主党の案がない。マニフェストに沿った具体的な案を出せるのか出せないのかはっきり答えてほしい。

 首相 一元化は「難しい問題がある」との認識を示したが「やめる」とは一切言っていない。最低保障年金も7万円という額を含めて提示している。党の案を出すかについて、政府・与党が一緒になった検討会議を作っており、4月には党と内閣、両方が責任をもって最終的には内閣の立場で決定して示したい。

 山口氏 政府とは違った民主党の案をはっきり出してほしい。(マニフェストは)既に破綻している。国民との約束を破ったことになる。鳩山(由紀夫)前総理はマニフェストが実現できなければ責任を取ると言って選挙に勝った。実現できないなら国民との契約違反だから、国民は契約を解除する権利がある。首相は契約違反の責任をどのように取るか。

 首相 議院内閣制における政権についての考え方はいろいろある。マニフェストは4年間に実現するとの基本的な構造になっている。折り返し地点の9月ごろまでには、どこまでやれたか、どこまでが今着手中か、この問題は難しいとなれば、検証して国民にお示しする。

 山口氏 国民から見れば実現の見通しがないことははっきりしている。ならば契約に違反した責任を首相としてどう取るか、国民に明らかにすべきだ。信頼がなければ、これから大きな改革ができるわけない。

毎日新聞 2011年2月10日 東京朝刊

 

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