抜き差しならない与野党間の対立。解きほぐす協議の糸口さえ見つからなかった。政治の混迷はどこまで続くのだろうか。
菅直人首相が就任して8カ月余り。自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表との初めての直接対決となったきのうの党首討論である。
首相が政策の最優先課題とする社会保障と税の一体改革。討論時間の大半が費やされたのは当然といえよう。
かねて首相は4月に社会保障のあるべき姿を提示し、6月には社会保障と税の一体改革案を提示する方針を表明してきた。
税制の抜本改革の中でもとりわけ消費税率引き上げが大きな焦点に浮上している。党利党略から離れて突っ込んだ議論を期待した国民も多かったのではないか。
谷垣氏は「職を賭してでもやる気があるのか、税の積算根拠になるような具体的な社会保障の改革案を出すのか」と追及した。
これに対し首相は「社会保障と税の一体改革はどの内閣でも避けて通れない課題」とした上で「案を出したら与野党協議に乗ってもらえるのか」と切り返した。
自らの土俵に引き込もうとの戦略だったのかもしれないが、首相答弁は繰り返しが目立った。望んだはずの「建設的な議論」にはほど遠かろう。
消費税増税は2009年総選挙で民主党が掲げたマニフェスト(政権公約)に明らかに違反する―というのが谷垣氏の主張だ。「マニフェスト違反の片棒を担げ、八百長相撲を取ってくれという話には乗れない」と衆院解散を要求した。
「柱となる年金案と財源案でマニフェストは既に破綻している」と公明の山口氏も同調。首相が責任をとるべきだと迫った。
首相は「一体改革の議論をしないで『まず解散だ』というには国民より党の利益を先行させるものだ」と拒否した。とはいえマニフェストの見直しが避けられないことは首相自らも認めたはずだ。
谷垣氏や山口氏が指摘するように、民主マニフェストには実現が困難視されるものも少なくない。
まずは現実を率直に認め、マニフェストの検証とともに見直す方向を国民に丁寧に説明すべきではないか。社会保障や税といった改革を成し遂げるためには国民の信頼が何より欠かせないからだ。
一方、小沢一郎民主党元代表の証人喚問要求に対し首相は「国会で説明をされるべきだとの認識は変わっていない」と述べるにとどまった。野党の攻勢とともに党内の親小沢勢力の動向も絡み、首相にとっては正念場となろう。
新年度予算案の国会審議が本格化する。早期解散に追い込みたい野党の攻勢はさらに強まろう。ただ肝心の政策論議を忘れてもらっては困る。
党首討論の45分はあまりに短すぎる。テーマごとに頻繁に開くべきだ。中身のある真摯(しんし)な議論を重ねることこそ、国民の不信を解く一歩である。
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