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再生会議論議に望む 政府は早く両立シナリオ示せ

 今年の冬は例年より雪も多く寒冷で、春作業の準備も遅れがちだ。加えて、昨秋以来の環太平洋連携協定(TPP)論議が農家の心に重くのしかかっていることは否めない。
 政府は、昨年11月に閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」に基づき、「高いレベルの経済連携」と「食料自給率の向上や国内農業・農村の振興」を両立させようと、総理を本部長とする「食と農林漁業の再生推進本部」を設置し、今年6月を目途に「基本方針」の取りまとめに向け、鋭意検討中だ。
 菅首相はことあるごとに、「平成の開国」と「農業」かの二者択一の発想はとらず、これらは両立すると力説している。
 昨年10月、菅首相が所信表明演説でTPPに言及して以来、はや半年が過ぎようとしている。しかしながら、両立シナリオはなかなか示されない。あるのは農水省が昨年10月に試算した、日本農業が崩壊の縁に立たされる潰かい滅めつシナリオともいうべきものと、内閣府による交渉に参加した場合のメリット試算及び、経産省による参加しなかった際のデメリット試算。要するに、同じ政府から前提を違えてメリット、デメリット論が角を突き合わせている。異様ではないか。
 これで、どうして農家は将来展望を持てるのか。農水省が示すキロ57円の米に国産米の9割が放逐されるシナリオだけでは、どうして農家は春作業の準備ができようか。
 ようやく最近の報道では、農業も含めて24もの交渉分野があり、その状況が少しずつ明らかになりつつあるが、それはそれで重大な問題をはらんでいることが表面化し出している。
 「開国」「アジア太平洋の成長を取り込む」など勇ましい言葉を発するだけでなく、農業経営者が展望を描ける、客観的なデータに基づいた情報提供が求められている。

 [2011-2-11]