[ポスト振計]悔いを残さない議論を

2011年2月12日 09時16分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 選挙前にも、政権交代が実現したあとも、民主党は、沖縄を地域主権改革のモデルにしたい、といっていた。口先だけの思いつきではなく、政権党としてほんとうにそれを実現したいと思うなら、動くのは今だ。

 沖縄振興特別措置法と、同法に基づく沖縄振興計画は2012年3月末で期限切れを迎える。県は3月末までに現行計画に代わる新たな計画(沖縄21世紀ビジョン基本計画)の素案をまとめる考えだ。

 新たな振興の枠組みをどのように制度設計するか。旧法を一部改正し、10年刻みの延長を重ねてきた従来のやり方では、激変する時代環境に対応することはできない。

 これまで法改正や計画づくりを実質的に主導したのは沖縄開発庁(内閣府沖縄部局)だった。県が原案を作成して国に伺いを立て、官僚に怒鳴られながら計画を練り上げる。そのような「上下関係」を前提にした計画づくりをまず改めなければならない。

 県民参加の下で練り上げた「21世紀ビジョン」を踏まえ、県民のための振興計画を県主導で実現する。このようなプロセス自体、過去になかったことだ。

 県民のための総合計画を県主導で実現すること。計画実現のための財源として、自由度の高い一括交付金を創設すること。この二つは、自立のエンジンを駆動させるための両輪である。

 「沖縄を地域主権改革の先行モデルにしよう」という強い意気込みで取り組めば、新しいものを生みだすことができるはずだ。

 12年度以降、新しい法制度の下で、内閣府沖縄部局と沖縄総合事務局は、どのように位置づけられるのか。県との役割分担はどうなるのか。具体的な政策やプロジェクトの議論だけでなく、振興策を推進する沖縄振興体制そのものの検討も重要である。

 現行法の期限切れまでに残された時間は少ない。気がかりなのは、菅政権になって、地域主権改革に対する当初の意気込みが感じられなくなったことだ。取り組みに失速感が目立つ。

 経営者出身の稲嶺恵一元知事はかつて、県の基本姿勢を「魚はいらない。欲しいのは釣り具だ」と説明した。補助金(お金)よりも制度創設を、という意味である。

 しかし、現実には、使い勝手が悪く産業振興にあまり役立っていない制度や、鳴り物入りでスタートした割に効果の薄い制度も少なくない。なぜそうなったのか、既存制度の検証も欠かせない。

 現行法に代わる新たな法律づくりとポスト振計の策定作業は、米軍普天間飛行場の移設問題を抱えながら進められている。

 政府は昨年9月、5年半ぶりに再開した沖縄政策協議会の下に、沖縄振興部会と基地負担軽減部会を設けた。今後の議論の展開次第では「振興策と基地の取引」が浮上するのではないか、との疑念が消えない。過去に何度もそのようなことがあったからだ。

 沖縄振興の新たな枠組みづくりを政府と県だけの作業にしてはいけない。

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