--社会保障制度の問題点は何と考えますか。
◆年金はもちろんだが、それ以上に医療、介護、子育てには問題が多い。介護は報酬が低くて、若者が就職しても生計を立てにくい。今まで不十分だった子育て支援は、少子化に歯止めをかけるためにも、女性が結婚しても働きながら子どもを生み育てられる環境を整えるべきだ。国民の負担をある程度上げて、こうした点を改善しないといけない。
--所得環境の悪化に伴い、国民の負担の重さが指摘されています。
◆国民の所得に対する税金と社会保障費の負担率(国民負担率)で見ると、欧州には60%を超える国があるが、高齢化率が最も高い日本は39%に過ぎない。日本がこれまで持続できたのは、社会保障サービスの水準がそれほど高くないことに加え、赤字国債で補填(ほてん)しているから。これから高齢化率がさらに高くなり、人口も減少するので、デフレ下でも増税は避けられない。
--民主党の調査会は社会保障の安定・強化のために消費税増税を提言しています。
◆消費税だけでなく、住民税、所得税をどうするかは、将来の社会保障の姿を考えながら検討すべきだ。一方で、菅内閣は財政運営戦略を策定して、財政再建目標も決めている。消費税の配分の優先度は社会保障にあるが、財政再建にも投じるべきだ。日本は世界から財政の持続可能性について疑問をもたれており、景気が改善するまで(増税を)待てない深刻な状態だ。遅れれば遅れるほど借金が膨らみ、日本の財政は窮地に陥る。
--自公政権は消費税を含む税制の抜本改革の実施を明記した所得税法の付則を成立させています。
◆法律に書いてある意味は大きい。抜本改革は一義的には政権を握っている政党の責任だが、付則を作った側も責任はある。道義的には「おれは知らないよ」とは言えないだろう。【聞き手・久田宏】
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■人物略歴
69年一橋大大学院修了。社会党北海道本部書記次長などを経て、昨年まで参院議員3期。鳩山、菅内閣で副財務相。政府の社会保障改革に関する集中検討会議メンバー。66歳。
毎日新聞 2011年2月15日 東京朝刊