この内閣に国政のかじ取りを任せていて本当に大丈夫なのか-。
そんな国民の不安と不信の念を、菅直人首相は率直に受け止め、局面打開へ自ら決断し、果敢に行動すべきである。
菅内閣に対する国民の視線が一段と厳しさを増してきた。共同通信社の世論調査によれば、内閣支持率は19・9%と、ついに2割を割り込んだ。
昨年6月に内閣が発足して最低の水準である。有権者の5人に1人の支持さえおぼつかない内閣の窮状は、誰の目にも明らかだ。
退陣表明に追い込まれる直前の鳩山由紀夫前内閣の支持率が19・1%だったことを振り返れば、「政権末期」という言葉すら思い浮かぶ。
支持率が落ち込んだ理由は、はっきりしている。「熟議の政治」を掲げながら、与野党の政策協議を通じてねじれ国会を乗り切る展望は開けていない。
「不条理をただす」と誓いながら、強制起訴された小沢一郎民主党元代表の処分や国会での説明責任をめぐって党内のごたごたも絶えない。これでは、政権交代に政治の刷新を期待した国民の失望と閉塞(へいそく)感は強まるばかりである。
場当たり的な国会対応と政権運営も目に余る。参院での多数派形成に向けて模索してきた公明党との連携が困難と見るや、今度は連立政権を離脱した社民党との「復縁」を目指すという。
普天間移設の関連予算案や法人税減税に反対する社民党との修正協議は容易ではあるまい。仮に協議がまとまったとしても、野党時代の民主党が「数の暴挙」と批判した衆院再可決に必要な3分の2要件をぎりぎり満たすにすぎない。
予算案や関連法案を「換骨奪胎」してまで追求すべき「数の力」かどうか、疑問である。首相が提唱する「熟議」との整合性も鋭く問われよう。
民主党はきのうの役員会で、小沢氏について判決が確定するまで党員資格停止処分とすることを決めた。きょうの常任幹事会へ提案するという。
首相は先週、本人と会談して自発的な離党を求めたが、小沢氏は拒否した。
党員資格停止は、党規約で定める処分で最も軽い。党代表が直談判で事実上、離党勧告したのに、これを拒んだ党員の処分が、より穏便な党員資格停止とは理解に苦しむ。
野党は小沢氏の証人喚問を求めている。民主党は消極的だが、国会で説明責任を果たすべきだという主張を貫くのであれば、党内処分で一件落着とはせず、証人喚問へ動くのが筋ではないか。
野党にも注文しておく。世論調査では首相が唱える社会保障と税の一体改革で野党も協議に応じるべきだという回答が約8割に達した。私たちも同感である。
「衆院解散が協議の前提」と突っぱねる自民党の論法には無理がある。協議に応じ、是々非々の立場から論陣を張ることが「責任野党」の姿ではないのか。
=2011/02/15付 西日本新聞朝刊=