【永田町・霞ヶ関インサイド】社民にすりよる政局観なき菅 公明党のメッセージに応えず

2011.02.15

 菅直人首相には政局観がないのだろうか。焦点の2011年度予算関連法案成立を目指し、社民党(福島瑞穂党首)との政策協議に踏み切った。

 「数の論理」優先である。同党所属衆院議員6人を確保できれば、予算関連法案を成立させるために必要な衆院の「3分の2」(318議席)に届くという計算である。

 この「捕らぬ狸の皮算用」には前提がある。まず、衆参ねじれの参院で否決されるだろう予算関連法案を衆院での再議決に社民党の6人が一致して賛成すること。次に、菅政権が打ち出した法人減税の撤回を求める社民党の主張を受け入れること。同党に妥協すれば、当然にも経済界から総スカンを食らうのは必至だ。

 そこまでやるのであれば、他に打つ手はあった。公明党対策である。同党の漆原良夫国対委員長は1月23日のNHK「日曜討論」で「私どもは(菅政権が作った)予算に反対だ。その予算をそのまま執行するような予算関連法案にも慎重にならざるを得ない」と語った。

 翌日の「公明新聞」は、漆原発言を1面トップで紹介した。同党の山口那津男代表が、やはり前日に開催された自民党大会で来賓として「われわれは『闘う野党』としてこれからの国会で、政権・与党の至らざるところを厳しく追及していく」とあいさつしたのだが、こちらは1面の準トップ扱い。

 これはまさに、公明党から政府・与党へのメッセージだった。政府予算案の修正を含め民主党の09年衆院選マニフェスト(政権公約)を見直すのであれば、予算協議に応じるし、国民生活に直結する予算関連法案に賛成する余地もある、と。

 ところが、民主党の岡田克也幹事長は原理主義者よろしく、24日の定例会見でマニフェストの見直しは予算案の衆院通過後に目指したいと、突き放したのだ。公明党のメッセージを深く考えた上での発言とは思えない。

 せめて菅首相が、政府施政方針演説後の各党代表質問時に「真摯に見直すので、公明党は予算審議に応じていただきたい」とでも言っていれば、局面は大きく変わっていたはずだ。

 今や公明党は、4月24日の統一地方選第2弾とのダブル選挙になっても対応できる総動員態勢を敷き、菅政権を衆院解散・総選挙に追い込むと言明している。事実、9日の党首討論でも山口代表の政権批判のボルテージは下がることはなかった。

 「3月政局」の最終局面で野党が提出する内閣不信任案の成否如何(いかん)では早期解散はあり得る。(ジャーナリスト・歳川隆雄)

 

注目サイト