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小沢氏処分方針 「けじめ」と言えるのか '11/2/16

 「民主党としての一つのけじめだ」。菅直人首相は胸を張った。果たして額面通りに受け取れるだろうか。

 政治資金規正法違反の罪で強制起訴された小沢一郎元代表をめぐる処分方針である。裁判で判決が確定するまで「党員資格停止」とするという。党常任幹事会で来週中にも正式決定する運びだ。

 岡田克也幹事長は「議員本人が起訴された事実は重い」と指摘。元秘書3人が起訴され、衆院政治倫理審査会への出席要請に応じていない点も考慮すべきだとした。

 検察審査会の議決に基づく強制起訴の場合、検察による一般の起訴と同列に論じるべきではなかろう。小沢氏は「強制力を持った検察の捜査で不正はなかった。何らやましいことはない」と一貫して主張している。

 しかし政治資金をめぐる小沢氏の説明に納得できない国民が多いのも確かだ。予断を持つべきではないが、党として一定のけじめを求められるのは当然といえる。

 ただ「除籍(除名)」や「離党勧告」に比べると、党員資格停止は軽すぎる感がぬぐえない。選挙区総支部への資金交付が止まり、期間中は選挙の公認を受けられないものの、党にとどまって議員活動を続けることができる。

 仮に党員資格停止処分を受けたとしても、小沢氏にとって実質的な影響はさしてあるまい。

 どうしても、ふに落ちないのが首相の姿勢である。

 年頭の記者会見で首相は、強制起訴された際の対応について「政治家としての出処進退を明らかにすべきだ」と強調してみせた。今月10日の小沢氏との直談判でも自発的な離党を迫ったはずだ。

 小沢氏が応じなかった以上、離党勧告か除名を検討するのが筋だろう。最も軽い党員資格停止という首相の下した判断は、中途半端と言わざるを得ない。

 ねじれ国会で厳しい政権運営を強いられている。処分の色合いを薄めることで、小沢支持派議員の離反を食い止めたいとの思惑が透けてみえる。

 当面の最重要課題である新年度予算関連法案の衆院再可決には3分の2の確保が不可欠。社民党などの協力が得られても、与党から造反者が出れば元も子もなくなることは計算済みだろう。

 それにしても首相の優柔不断さにはあきれるばかりだ。「甘い処分」という野党の批判も一理ある。政治的配慮を優先したのではないというなら、きちんとした説明をすべきだ。

 もう一つ忘れてならないのは党内の処分問題が決着しても、国会での小沢氏の説明責任は残っているということである。「公開の法廷で真実を述べる」として、国会招致に応じようとしない態度には首をかしげたくなる。

 先週末の共同通信の世論調査で内閣支持率はついに20%を割り込んだ。「首相に指導力がない」が不支持理由のトップ。証人喚問も視野に招致で決着を図るしか、もはや浮かぶ瀬はあるまい。




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