社説

2011年02月19日

民主は政権の体なしてない

 菅直人首相の政権運営を批判し、小沢一郎元代表に近い若手衆院議員が会派離脱届を党執行部に提出した。

 2011年度予算案の衆院通過を控え、重要な局面だ。党内抗争にかまけている暇などないはず。会派離脱しながら政党には残るという理屈にも説得力がない。

 米軍普天間飛行場移設問題に関し、抑止力は「方便」との鳩山由紀夫前首相の発言もあったばかりだ。民主党内の緊張感の欠落にはあきれるしかない。

 元代表と若手議員の会派離脱騒動との関係は定かではない。だが小沢氏が真剣に「国民の生活第一」と考えるなら、自ら育てた若手の軽挙妄動を抑え、国会審議に専念するよう促すのが「後見人」としての筋だろう。

■取り返しつかない傷■

 内閣支持率は20%の危機ラインを割り込み、菅首相の指導力には落第点がつけられている。

 鳩山前首相は、ただでさえ見通しのない国会運営に新たな波乱要因を持ち込んだ上、民主党政権の信用に取り返しのつかない傷を残した。

 民主党を支えるべきトップ3人が、逆に政権を揺るがしている。これでは、政権の体をなしていないと言わざるを得ない。

 今回の通常国会ほど日本政治の真価が問われる国会はない。ねじれ国会という試練の中から新たな国会のルールを生み出せるのか。日本の活力を取り戻し、社会保障改革と財政再建の道筋をつけられるのか。各党は政治運営、政策構想の両面で課題を突きつけられている。菅首相は施政方針演説でねじれ打開のため「熟議の国会」を訴えた。ところが具体策となると全く知恵がない。

■建前論を振りかざす■

 民主党は「国益のためにどうするかを第一義に考えるべきだ」と大上段から野党の譲歩を求めるだけ。自民党は「マニフェスト(政権公約)の破綻を認め謝罪するのが先だ」と建前論を振りかざし、与野党妥協の土台作りは一向に進んでいない。

 予算案は年度内成立の見込みとなり、焦点は予算関連法案に絞られている。こちらは全く見通しが立っていない。当初、政府、与党は参院で多数を確保するため公明党に擦り寄り、袖にされると衆院での再議決を目指し社民党に秋波を送った。

 社民党は鳩山発言も考慮したのだろう、公債特例法案反対に傾斜している。もはや風前のともしびだった再議決戦略に、今回の会派離脱騒動はとどめを刺した。

 離脱組はマニフェスト回帰を主張しており、社会保障・税の一体改革の党内取りまとめにも暗い影を落とす。八方ふさがりを打開する方策は見えない。政治が当事者能力を失えば株価、長期金利に深刻な影響を及ぼすおそれがある。菅首相が事態を収拾できるのか、その成否は政界のみならず、経済にも重大な意味を持つ。


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