自民党の仕事始めであいさつする谷垣禎一総裁。政権復帰も視野に入ってきた自民党だが、党改革を置き去りにしてはならない=1月5日【拡大】
「今年は菅直人政権を追い込み、政権奪還への道筋を切り開く」。1月5日、自民党の谷垣禎一総裁は党本部で行われた仕事始めで、こう気勢を上げた。先の衆院選で一敗地にまみれた自民党だが、ようやく政権復帰への兆しが見え、党内は早期の衆院解散・総選挙に向けて一致団結しているようにも見える。
2年前の夏、谷垣氏が選出された総裁選では、派閥解消や世代交代など、党改革の必要性がテーマになった。その目的は「自民党を再び信頼される党に再生する」ためだった。だが、政権復帰も視野に入った今、党改革への熱意は雲散霧消しかけている。
もちろんいまだに党改革を訴え続けている議員も多く、党内の組織も動いている。だが、この1年半で再び政権与党として信頼に足る党改革を実現できたかと問われれば、疑問符が付く。菅内閣の数々の“敵失”にもかかわらず、自民党に支持が回帰していないことからも明らかだ。産経新聞社が今月行った世論調査での政党支持率は、内閣支持率が20.7%と低迷する中でも、民主党18.0%、自民党18.2%とその差はわずかでしかない。
「国民の中に根深く残る自民党へのアレルギーはまだ消えていない。その危機感を持って党をがらっと変えることができるのか。政権批判よりも党改革に対する危機感の方が強い」(小泉進次郎衆院議員)、「党改革が全然見えてこない。総裁が『党改革はこうする』と言えば、多少議論があっても、みんな引き下がる」(礒崎陽輔参院議員)。政権復帰に前のめりになり、党改革が置き去りにされつつある党内のこうした雰囲気を警戒する声はあちこちで聞かれる。
「いま総選挙をやれば必ず勝てる」。党幹部がこう息巻くように、党内はすでに衆院解散・総選挙ムードに染まりつつある。小泉氏らの声はかき消され、執行部の耳に届かないのかもしれない。(峯匡孝)