大手ゼネコンの大林組が、かつて、クフ王型の大ピラミッド建設計画をたてたことがある
▼その概要は、ネット上の『季刊大林』創刊号の記事で読むことができる。実際に建設するというのではなく、いわば知的実験としての面白い計画だが、結論だけ書くなら、一九七八年当時の試算で、工期は五年、総工費は千二百五十億円と弾(はじ)きだしている
▼何であれ、新品は素敵に輝いてみえるものだ。仮に、ピカピカの新ピラミッドが今の世に造られれば、ちょっとした名所にはなるだろう。だが、しばらくはいいが、やがて薄汚れ、古びた感じがしてきて飽きられる気がする
▼そこへいくと、エジプトにある本物は途方もなく古いが、古いことが問題にされることはない。妙な言い方だが、新しいものほど古びやすい。長年使い込んだ鞄(かばん)や着古したコートなら、その「味わい」が愛されても、新品を中途半端に使っただけなら、ただの中古だ
▼わが国の政権でいえば、この五年足らずで、実に四つの「新品」が「中古」に。五つ目の「新品」が菅政権だが、その足元も既にぐらついている。内閣総辞職か解散かと最近、政界は臆測で喧(かまびす)しい。またも「新品」への交換が繰りかえされるのかどうか…
▼何にせよ、思うのは、この国は、さて、いつになったら、長く使い込んで「味わい」の出るような政権を手にできるのか、である。