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小沢・民主元代表:処分決定 民主、分裂含み 「離脱」16人、造反ちらつかせ

<右>小沢一郎元代表の処分を決定する民主党常任幹事会にのぞむ岡田克也幹事長=国会内で2010年2月22日午後4時1分、武市公孝撮影<左>倫理委員会に出席するため、民主党本部に入る小沢元代表(左)=東京都千代田区で同日午前9時55分、佐々木順一撮影
<右>小沢一郎元代表の処分を決定する民主党常任幹事会にのぞむ岡田克也幹事長=国会内で2010年2月22日午後4時1分、武市公孝撮影<左>倫理委員会に出席するため、民主党本部に入る小沢元代表(左)=東京都千代田区で同日午前9時55分、佐々木順一撮影

 <追跡>

 民主党が22日、政治資金規正法違反で強制起訴された小沢一郎元代表を「判決確定まで党員資格停止」とする処分を正式決定したことに対し、小沢元代表やグループは菅直人首相への対抗姿勢を強めている。会派離脱を宣言した小沢系の16衆院議員は11年度予算案での「造反」姿勢をテコに首相側を揺さぶり、党分裂含みの様相を呈する。与党の国民新党の亀井静香代表は自民・公明両党を含めた「救国内閣」画策の動きを水面下で活発化させており、首相の求心力回復への弾みとはなりそうもない。【野原大輔、朝日弘行、小山由宇、葛西大博】

 「自民党政権で進められた捜査だ。私は選挙責任者として政権交代を成し遂げ、国民の判断も得ている」

 22日午前の民主党倫理委員会。渡部恒三委員長が「無罪を信じたいが、国会で説明してほしかった」と述べると、小沢元代表は「陸山会」事件の重荷を背負いながら、それを克服して政権交代を果たした実績を強調した。

 小沢元代表を支持する鳩山由紀夫前首相グループ所属で、進行役の小沢鋭仁前環境相が「判決確定まで」とした党員資格停止の期間について、行き過ぎた処分として「指針通りの6カ月でいいのでは」と提起。小沢元代表が求める書面での回答にも応じるべきだと主張したが、渡部氏は「必要はない」と却下したという。

 続く常任幹事会では、処分期間について「裁判手続きに要する期間を予見できない」との当初方針を追認。首相は「処分ではなく(自発的離党を求めて)小沢元代表と話したが、かなわなかった」と理解を求めたが、処分に反対してきた輿石東参院議員会長が「本来なら離党勧告処分に相当するということか」とクギを刺す場面もあった。首相は22日夜、記者団に「丁寧な手続きを経て党のけじめをつけた」と述べ、決着とする考えを示した。

 「一昨年、政権を担わせていただいた。一人一人が原点を思い起こして政治に当たらなければならない」

 小沢元代表は22日夜、東京都内で開かれた小沢系衆院議員のパーティーであいさつし、首相に対抗する姿勢を示した。処分決定を受け、焦点は国会の民主党会派から離脱表明した比例単独当選組の16議員の動向だ。

 「16人がああいう行動に出た。処分すれば党内が混乱する」。小沢元代表に近い川内博史衆院議員は22日の常任幹事会で、会派離脱問題に触れ執行部をけん制した。16人は11年度予算案への賛成を明言していない。安住淳国対委員長は「いやしくも与党に身を置く議員だから心配していない」と押し戻すのが精いっぱいだった。

 16人がまとまって予算案などに「造反」すれば、菅政権の求心力は一段と低下し、党分裂は一気に進む。

 16人の動向は、衆院解散の動きと連動している。民主党では比例単独候補の名簿登載順位は下位。菅内閣支持率が1割台に突入する中での総選挙では苦戦は必至で、新党からの出馬で生き残りをかける選択肢もある。小沢元代表と親交がある河村たかし名古屋市長率いる「減税日本」など地域政党との連携も視野にある。

 22日夜、東京都内の会合で離脱表明グループ会長の渡辺浩一郎衆院議員は「(小沢グループの)松木謙公衆院議員らに別行動してもらい、合流することができればいい」と述べた。松木氏は河村氏とのパイプがあるとされる。

 しかし、造反に現時点で展望があるわけではなく、今月末にも迎える予算案採決への態度も煮え切らない。

 「新党を作るという話がテレビで出ているが、どうなんだ」。22日、小沢元代表を支持する「一新会」の会合で、奥村展三衆院議員が聞くと、出席した渡辺氏が「そんなことはありません」と応じた。「予算案に反対したら大変なことになる」との意見も出たが、渡辺氏は再び否定したという。

 執行部は16人に翻意を促しているが、一人は説得に対し「小沢さんのおかげで議員になれた」と述べた。小沢元代表の意向に背くことはできず、行動をともにせざるを得ない苦しい立場をのぞかせた。

 ◇亀井氏「救国内閣」を模索

 小沢元代表の処分問題にひとまず区切りをつけた民主党。だが、「3月危機」を回避する道筋は狭まるばかりだ。国民新党の亀井代表は、野党からも閣僚を起用する「救国内閣」樹立のための内閣改造を菅首相に迫る。狙いは、政権の延命だが、対決姿勢を強める野党の協力獲得は困難で、与党の苦境が際立っている。

 「首相経験者には責任がある。一緒に考えてもらいたい」。亀井氏は先月28日、民主党の鳩山由紀夫前首相、自民党の森喜朗元首相と会談し、「ねじれ国会」乗り切りへ党派を超えた「大同団結」を呼び掛けた。

 亀井氏は、郵政改革法案の成立を図るため社民党も加えた旧連立勢力の連携を主張してきた。しかし、社民党は22日、11年度予算執行の財源を担保する特例公債法案への反対方針を決定。衆院の3分の2以上の勢力を確保し、衆院で法案を再可決するめどは立たなくなった。救国内閣構想は政権の八方塞がりを打開する窮余の策だ。

 亀井氏が密談した相手は森元首相らだけではない。自民、公明両党の有力議員と積極的に接触を重ねており、自民党関係者によると、14日夜には同党の古賀誠元幹事長と会談し、協力を打診したという。

 だが、早期の衆院解散を迫る自民党が政権延命に手を貸すシナリオは現実味に乏しい。同党幹部は「そんな誘いに乗ったら終わり。『また古い自民党が出た』と批判され、選挙も負ける」と取り合わない。

 公明党の山口那津男代表も22日の記者会見で「野党を政権運営の責任に引きずり込むような対応は無節操」と不快感を示した。

 ◇「中間派」会合、35人出席 融和求める声

 民主党執行部と小沢一郎元代表の対立から距離を置く桜井充副財務相ら中間派の議員が呼びかけた会合が22日、国会内で開かれ35人が出席した。党内融和を求める声が相次ぎ、桜井氏は会合終了後、記者団に「我々が接着剤にならないといけない」と強調した。

毎日新聞 2011年2月23日 東京朝刊

 

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