菅政権は危険水域に入っている。世論調査の内閣支持率は、13日に公表した共同通信が19・9%、17日に公表した時事通信は17・8%だった。
これではいつ倒れても不思議ではないが、そのきっかけとして確実なものの一つが、3月末までに成立させなければいけない予算関連法案だ。
予算そのものは、衆議院に先に提出され、衆議院で予算が議決されれば、参議院の審議が終了しなくとも30日後には自動的に成立する。菅政権は衆議院の多数を握っているので、予算の成立は間違いない。
しかし、予算執行に必要な政策の制度設計を盛り込んだ法案で、税制改正法案や特例公債法案などの予算関連法案は一般の法案同様、衆議院可決後、参議院で否決されると、衆議院の3分の2以上の多数で再可決が必要だ。
衆議院の3分の2については、民主党の他、国民新党だけでは無理で、以前の連立相手であった社民党を巻き込んでギリギリできるかどうかという情勢だ。
ところが、社民党内には一度「離婚」した相手と組むことに慎重な人もいる。与謝野馨氏の入閣にも反発の声が出たが、ここにきて“宇宙人元宰相”鳩山由紀夫氏の爆弾発言が出て、社民党の怒りは一段と強まった。
それが、鳩山氏が15日、米軍普天間飛行場の県外移設断念の理由として挙げた在沖縄米海兵隊の抑止力を「方便だった」と発言したことだった。これには与野党から批判が出ているが、特に「離婚理由」は「方便」だったといわれた社民党はカチンときた。
予算関連法案の成立がおぼつかないのは、ねじれの中での与党側の国会運営にある、はじめは予算修正に弾力的に対応するそぶりをみせながら、社民党を巻き込む二股戦略が裏目に出た。二兎を追う者は一兎をも得ずだ。
予算関連法案のうち、関税法関係のいわゆる「日切れ法案」については、成立しないと関税率がアップして4月から国民生活が本当に混乱するため、野党も協力して成立するだろう。
しかし、社民党の反発に加えて、民主党内からも衆議院議員16人が新会派の結成を申し出るなど公然と執行部批判が出ているので、特例公債法案など予算執行のために必須な法案では、とても衆議院の3分の2での再可決は難しく、成立しないだろう。
これらが成立しない場合、本格的な年度予算は無理で、特例公債法を発行しないですむような短期間の暫定予算を成立させることになるだろう。
その場合、予算を成立させられなかった責任が菅直人首相に出てくる。いわば事実上の内閣不信任である。菅首相には解散という手段もあるが、党内事情を考えると負ける選挙はできず、辞職する形になる公算が大きい。
菅首相は自分のクビとひきかえに来年度予算を通すのだ。いよいよ政局モードに突入だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)