最近、「内向きな若者」という言葉や活字が飛び交っている。経済産業省のグローバル人材育成委員会も昨春の報告書で「若者の海外志向の低下」に警鐘を鳴らした。確かに英語検定TOEIC(満点990点)の公開テストの平均点でも日本は01年に韓国に逆転され、09年に差は約40点に拡大した。だが、若者はそれほど内向きなのか。
産業能率大の昨春の新入社員調査によると「海外で働きたくない」は49%で前回(07年)を約13ポイント上回った一方で、「どんな国・地域でも働きたい」も9ポイント増の27%と過去最高。みな「内向き」というわけではないのだ。住宅会社に勤務する男性(27)から昨年、退職の相談を受けた。「海外メディアで仕事がしたい」との言葉に、厳しい就職難をものともしない志を感じた。
「内向き」批判の背景には、国内需要の先細りで、海外にしかビジネスチャンスがない状況への焦りがありそうだ。だが、国際会議や海外事業で存在感を示せない大人が自分を棚に上げ、若者に責任を負わせる心理も潜んでいるのではないだろうか。【藤好陽太郎】
毎日新聞 2011年2月24日 12時29分