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全国で2カ所の性依存症専門外来の医療機関、治療の現場とは/横浜

2011年2月24日

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 性依存症の専門外来を行う医療機関は、全国でもわずか2カ所だけ。そのうちの一つ、横浜市中区弥生町の「大石クリニック」では週1回、患者の治療の一環として、2010年1月からグループミーティングを行っている。06年に刑務所内で同様の治療プログラムが始まったが、受刑者以外の人たちの受け皿となるミーティングでは、どんなことをしているのか。性依存症の自助グループはメディアで取り上げられることがほとんどなく、認知度は薄い。端緒的な取り組みの現場を取材した。

 すっかり日が暮れた時刻、クリニックの一室に男性たちが集まってきた。この日の参加者は、20~40代の6人。講師の目白大学(東京都新宿区)人間学部心理カウンセリング学科准教授、原田隆之さん(46)=臨床心理学=と同クリニックの男性看護師を上座に、男性たちは円状に配置されたテーブルに着く。

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 最初に、1週間のスケジュールを立てる。そして、原田さんが一人一人に休日の予定を聞いていく。

 緊張した面持ちの20代前半の男子学生は、「朝6時40分に起きて、9時にシャワーを浴びて出掛ける準備をして…」と切り出し、友人と食事や散策を共にするなどと事細かに話した。

 暇な時間が問題行動への引き金になってしまうことがある。原田さんは「規則正しく自分を時間の枠組みに入れることで、問題行動から自分を遠ざける効果がある」と言う。

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 そして、本題へ。男性たちは問題行動を起こす「引き金」を挙げた。その引き金で、どういった思考や期待が湧き、それに伴う行動を起こし、行動後の結果の善しあしがどうだったかを過去の経験から考えた。

 妻の勧めで参加した40代の男性会社員は過去に痴漢で逮捕された。「朝の通勤電車のラッシュで近くに好みの女性がいること」が引き金に。男性は「混んでいれば大丈夫じゃないか」などといった考えが湧き痴漢に及んだ。

 その行為によって、性的欲求を満たせたという結果がある一方、「留置されれば、二度と家族とは住めない、という後悔。相手に対する罪悪感と家族に対する『またやってしまった』という思い」といった結果も。深刻な面持ちで冷静に、自身を分析した。

 男性は今、引き金になるリスクを遠ざけるため、路線を変え、混雑しない電車で通勤しているという。

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 日本ではこの認知行動療法のプログラムによる自助グループのミーティングは始まったばかりだ。原田さんによると、先行する欧米では、何もしない場合に比べて再犯率が30%減ったという研究結果が出ている。

 原田さんはかつて法務省矯正局で刑務所内での治療プログラムのプロジェクトチームに関わった。その経験から、懲らしめるだけでは改善はなく、精神的な治療が重要だと考える。「女性やセックスに対するゆがんだ考えを直すのが目的。やめたくてもやめられないのが依存症。それをやめられるスキルを付けてほしい」

 ミーティングは、改善したいという雰囲気に包まれている。その成果が出るかどうかはこれからだ。

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