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社説:元代表処分決定 国会に専念すべき時だ

 ひとつの節目には違いない。政治資金規正法違反で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表に対し同党は裁判確定までの間、党員資格停止処分とすることを正式に決めた。

 党内の混乱に区切りをつける時だが、国会では予算関連法案の成立が厳しい状況となり、民主党内の一部で首相の退陣論が取りざたされるなど政治は混迷している。与野党は政争にかまけず、予算関連法案の修正に神経を集中すべきである。

 ずいぶんと処分問題に時間を費やしたものだ。それでも決定にあたり元代表は処分方針に「合理的理由はない」と異を唱えた。

 確かに「やましい点はない」と主張する元代表の刑事責任の有無は法廷で決せられる。だからといって、党の処分も不当とする理屈に首をかしげてしまう。

 元代表は強制起訴である点を「通常の起訴と同視できない」と主張する。だが、法的に扱いは変わりなく、執行部が「法にもとづき国会議員本人が起訴された事実は重い」と指摘していた通りである。

 衆院政治倫理審査会に出席していないことも元代表は「出席は拒否していない」と主張した。これまで国会で説明する機会は何度もあったはずだ。証人喚問に応じる意向を示せば、野党も異議はあるまい。

 元代表に近い衆院議員による先の会派離脱騒動は、倒閣運動に等しい。元代表が引き続き党にとどまるつもりなら、当然ながら処分に従うべきだ。内紛まがいの動きをすれば政治全体の足を引っ張ることを自覚しなければならない。

 処分をめぐるゴタゴタの間に菅内閣を取り巻く状況は厳しさを増している。予算関連法案のうち特例公債法案などに社民党が反対する方針を決め、衆院再可決で乗り切る道は事実上、閉ざされた。民主党内では首相の退陣と引き換えに予算関連法案の成立を探る動きすら公然化している。政党として安直かつ無責任な姿と言わざるを得ない。

 自民、公明も含め与野党が本予算案や関連法案の修正を早急に協議し、接点を探るしかない。自民党も衆院解散要求一辺倒ではいけない。予算の組み替え案をまとめるだけでなく、修正協議を軌道に乗せないようでは「責任野党」に値しまい。

 日本経団連の米倉弘昌会長は予算審議そっちのけの政治状況に「与野党の協力が必要なのに、国民のため何も仕事をしておらず、給料泥棒のようなもの」と苦言を呈した。気持ちは理解できる。

 中東など国際、経済情勢の変化にも細心の注意を払うべき時だ。「ねじれ国会」下での責任の共有を与野党は今こそ、かみしめてほしい。

毎日新聞 2011年2月23日 2時33分

 

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