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リビア:強まる非難 反政府勢力が包囲網

 【カイロ伊藤智永、ローマ藤原章生】中東の衛星テレビ・アルアラビーヤは23日、リビア西部の都市アズザウィーヤが反政府勢力の支配下に入ったと伝えた。リビアの旧宗主国イタリアのフラティニ外相は「キレナイカ地方(東部地方)は既に政府の統治下にないと理解している」と指摘。リビア情勢は、最高指導者カダフィ大佐が統制を強める首都トリポリに向け、東西双方から反政府勢力の包囲網が固まりつつある模様だ。

 トリポリでは23日、カダフィ支持派が市街地に通じる幹線道路の入り口などを押さえ、反政府勢力の流入を妨害して「首都死守」に乗り出している。市中心部の緑の広場では支持派約150人が集まり、現体制を支持する集会を開いた。反政府勢力の目立った動きは今のところ見られないという。

 フラティニ外相は一連の騒乱の推計死者が最大1000人に上るとの見方を示した。「死者数に関する完全な情報はない」としながらも、「推計は確かなようだ」と述べた。

 カダフィ大佐は22日の演説でデモの徹底鎮圧を宣言したが、こうした強権姿勢に国内外の反発は強まる一方だ。

 サルコジ仏大統領は23日、「リビアとの経済関係を停止すべきだ」と経済制裁が必要との考えを初めて示し、ケリー米上院議員も米議会で制裁に言及した。南米ペルーは、リビアが国民への暴力を停止しない限り、外交関係を凍結すると発表した。

 一方、地域機構のアラブ連盟はリビアの対応を「人権侵害」と非難し、沈静化するまでリビアの連盟会合への出席を認めない方針を決めた。国連人権理事会は25日にリビア情勢に関する特別会合を開く。

 さらに、AFP通信などによると、リビアの駐インドネシア大使が政府の強権的な対応に抗議して辞任したほか、カダフィ大佐の次男セイフ・アルイスラム氏の側近も職を退いた。

 また、リビア東部の主要都市ベンガジの攻撃を命じられていたリビア艦艇2隻が攻撃を拒否し、地中海のマルタに到着。同様の命令を受けていた戦闘機も拒否し、パイロットは脱出の末、同機を墜落させた。

 他の中東地域でも激しい反政府デモは続いており、ペルシャ湾岸の島国バーレーンは23日、反政府勢力の要求に応じ政治犯を釈放し始めた。懐柔策の一環とみられる。イエメンでは23日、首都サヌアで反政府勢力とサレハ大統領の支持派が衝突し、反政府側の2人が死亡した。

 周辺国でデモが激化しているサウジアラビアは23日、インフレや若者の失業対策などとして、住宅や教育、社会保障関連の予算増額を発表した。また、昨年11月に米国で椎間板(ついかんばん)ヘルニアなどの手術を受けた後、モロッコで療養していたアブドラ国王が帰国の途に就いた。国民の不満を抑える狙いがあるとみられる。

毎日新聞 2011年2月24日 東京朝刊

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