理系の上級者向け、少ない行数でミスなく計算する秘訣がわかる
「数学の計算革命」(駿台文庫)
駿台文庫で「計算」を網羅的に扱った本といえば、初学者〜中級者向けの「カルキュール[基礎力・計算力アップ問題集]」を思い出すが、こちらはその続編とでも言うべき位置づけだろうか。著者は「分野別 受験数学の理論」の清史弘先生。少ない行数でミスなく計算できる計算のテクニックをポイント的に扱っている。
内容は理系志望者向けで、整式の計算・式変形(平方完成・割り算)が一応中心ではあるが、ベクトルの内積・外積に加え、数学Cの行列の計算、また数学Vでは極限の扱いに加えて「瞬間部分積分」などと呼ばれる特殊な形の積分計算を扱う。前半では著者いわく「短期的記憶力」を駆使して、計算するより書く方が時間がかかってしまう部分を極力なくそうとしており、後半では「知っているとちょっと得する」たぐいの計算技法を紹介する。
整式の計算では、次数ごとに係数を計算するのを基本していて、これは広く一般の受験生にもマスターして欲しい。多項式の割り算では、ふつうは筆算を書くがずっとその全部を見ているわけでないことに注目し、確定した結果は都度つど書き出してしまうことによって筆算を書かずに済ませようという試み。ただ、1次式で割るなら組立除法の方が生徒さんは慣れているだろうし、2次式で割る計算まで短期的記憶力で片づけてしまえるようになるには相当のトレーニングが必要だと思う。2×2行列を3ついっぺんに掛けてしまう計算についても(確かに方法自体には納得できるものの)同様の印象を持った。
確かにそこまで暗算でやってしまう著者はスゴイとは思うが、生徒さんにもそれが出来るようになって欲しいというより、パフォーマンス的な意味合いの方が強い気もする。
さらに、出版社のサイトには本書で紹介されている計算法の導入が「動画」でも紹介されている。内容的には、どこで短期的記憶力を使うのかが清先生の肉声による解説で事細かに説明されていて、好印象を持つ。が、つくりは思いっきり「手作り」で、まるで清先生が趣味で作ったページをそのまま出版社のサイトにアップしただけのよう。予備校のサテライト講座のような機材や設備はまったく使われておらず、そういうものをイメージしていた筆者は思い切り裏切られてしまった。最初の画面を見ててっきりホワイトボードだと思ったのが、姿のない清先生の声が聞こえてきて、ついで手のアップがぬっと出てきてそれが単なる「紙」だと知った瞬間の驚きと落胆といったら・・・。