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「非武装」を実現したコスタリカ
─ 非武装は実現不能な空論か?事例を考える ─
▼人類の夢は戦争の無い平和な世界だ
むらまち交流協会のメーリングリストでは、憲法で「非武装」を宣言し、それを実行している「コスタリカ共和国」のことが話題を呼んでいる。コスタリカ共和国について調べる。
軍隊のない国コスタリカ
1986年の大統領選挙は,モンヘの非武装中立政策を遵守して徹底する立場から立候補したアリアスが勝利を収めた。
大統領となったアリアスは,アメリカの経済援助を受けることと,アメリカの対ニカラグア政策に追随することを明確に区別することは可能であると主張し,女性と学生の支持を得て当選した。アメリカは,累積債務に苦しむコスタリカに対して経済援助をおくらせるなどして圧力をかけたが,アリアス政権はそれにひるまなかった。就任にあたり,「紛争は暴力ではなく対話によって解決すべきである」と表明したアリアスは,「積極的中立」を実践すべく,翌年の2月に終結の糸口がつかめない中米紛争の解決に向けて和平プランを提示した。(コスタリカ共和国 -State Flag-の国旗)
「トラクターは戦車より役立つ」と説いたアリアス案は,中米諸国の内政不干渉と国内民主化をより明確にした提案であった。この提案は,1987年8月,コスタリカとニカラグアを含む中米5か国首脳による和平合意に結実した。これに基づき,ニカラグア,グアテマラ,エルサルバドルの内戦は終了した。
1987年,アリアスは中米紛争の解決に貢献したことから,ノーベル平和賞を受賞した。受賞演説でアリアスは,「わたしの国は兵器のない国…子どもたちが一度も戦闘機・戦車・戦艦を見たことのない国です。」「わたしの国は教育者の国です。ですから,平和の国であるのです。対話を信じ…合意を見いだすことを信じています。暴力は拒否します。」と述べた。
コスタリカでは,過去66回行われた憲法改正で,常備軍廃止条項は一度も手を加えられていない。大統領の連続再選を認めないため,4年ごとの大統領選挙で政権は交代し続けているが,再軍備のための憲法改正論が提案される状況もみられない。これは,常備軍廃止の際に掲げられたスローガン「兵士の数だけ教員を」が実行され,教育を重視してきた帰結に他ならない。コスタリカの教育費は,国家予算の30%を占める。学校では,暴力を使わずにすべての紛争を解決するための思考力と実<践力を育てることに力が注がれている。
争って勝つのではなく,コミュニケーションを大切にし,お互いを理解しようと努力することが,紛争解決への唯一の道なのだという価値観が育てられているのである。この価値観がコスタリカの民主主義を培い,非武装永世中立政策を支えているのである。
1983年11月17日,コスタリカのモンヘ大統領は「永世的,積極的,非武装的中立に関する大統領宣言」を発表し,国際社会におけるコスタリカの「永世的,積極的,非武装的中立」の認知を求めた。この宣言が発せられた背景に,隣国ニカラグアの内戦激化があった。
1979年に誕生したニカラグアのサンディニスタ革命政府に対して,アメリカは,ニカラグアが第2のキューバと化す(社会主義化する)のをおそれ軍事干渉を行った。それにともない,コスタリカ領土がニカラグアの反政府組織コントラに利用されるおそれが出てきたのである。これに対し,武力によらずに防止する方策として,コスタリカは永世中立宣言を行ったのであった。
この宣言に対して,不快感を表明し,支持を拒否したのは,アメリカ一国であった。国際社会は,支持・歓迎・賛成の意思を示したが,これは,コスタリカの非武装中立政策が広く知られていたからであった。
コスタリカの非武装中立政策は,1949年に制定されたコスタリカ憲法に規定されている。この憲法は,1948年の大統領選挙における与党の不正に端を発する内戦を経て制定された。武装蜂起した野党指導者フィゲレスは,武力で政府軍を圧倒したものの,「軍隊はしばしば独裁体制によって,国民を力ずくで抑圧してきたが,我々は,民主的な話し合いの道を選ぶ。したがって政権維持のための武力はもういらない」と常備軍廃止を宣言した。
これが憲法の非武装規定となって,1949年の憲法国会で与野党の全会一致で採択された(当時22歳であったモンヘは,憲法制定委員の一人であった)。しかし,モンヘ大統領時代の非武装永世中立政策には,限界があった。当時コスタリカ国内には,ニカラグアのサンディニスタ政権に反対する非公式的な準軍事的集団が存在しており,コスタリカ政府はこれを暗黙ないし公式に支持していた。また,アメリカ,タイワン,韓国,イスラエル,ベネズエラなどから軍用品の提供,軍事顧問の派遣といった軍事援助を受けていた。アメリカの軍事基地設置要求は拒否し続けていたが,モンヘ政権には,非武装永世中立政策の不徹底ないし不明瞭さがあったのである。
■参照ホームページ
●むらまちMLよりコスタリカについて
●軍隊のない国[PDF]
●株式会社更五ホームページ
こちらより詳細な世界地図で国の位置を確認できます
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