2011年2月4日 11時10分 更新:2月4日 13時8分
【ワシントン草野和彦】今期限りの引退を表明したエジプトのムバラク大統領に対し、米上院は3日、暫定政権への権限移譲を求める決議案を採択した。オバマ政権は、大統領選や議会選挙の実施を早めるように促しており、これに同調する議会の動きは、米国の「総意」として「早期退陣」への圧力を強めていることを示した。
決議を主導したのは、オバマ政権に近い民主党のケリー議員と、共和党の重鎮のマケイン議員。決議は、ムバラク氏に対し「民主的な政治システムへの平和的で秩序ある移行」への即時着手を求め、その中に「(反政府勢力を取り込んだ)包括的な暫定政権への権限移譲」も含まれた。
またクローリー国務次官補は同日、大統領選や議会選挙に関し、「より早くエジプト国民に進展があることを示せば、それだけ(事態収拾には)よい」と述べた。
さらに「ムバラク氏には『時間を浪費する余裕はない』と伝えている」ことを明らかにした。
米国が「ムバラク即時退陣」を公に求めないのは、大統領支持派の反発や、他の親米アラブ諸国の懸念を招くためで、暫定政権の準備を進める一方で、自主的な退陣を促そうとしているようだ。
その選択肢の一つとして、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は3日、国軍の支持のもとでスレイマン副大統領率いる暫定政権を発足させ、ムバラク氏が即時に権限を移譲する案が、米国とエジプト当局の間で議論されていると報じた。
穏健派イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」を含む野党勢力と共に選挙制度改革にも取り組む内容だが、現時点ではスレイマン氏と国軍は、ムバラク氏を見捨てる意思は見せていないという。