2011年2月3日 21時26分 更新:2月3日 22時1分
衆院予算委員会は3日、菅直人首相と全閣僚が出席した基本的質疑4日間の日程を終えた。首相が野党の協力を得ようと苦肉の策で持ち出したのが、民主党の09年衆院選マニフェスト(政権公約)の相次ぐ修正発言だ。子ども手当や年金制度改革案など民主党の根幹政策を、政府が社会保障制度改革案をまとめる4月までに見直すと首相は表明した。
ただ、自民、公明両党は予算審議を通じて「民主党のいいかげんさがより鮮明になった」と対決姿勢を強めており、展望はまったく開けていない。
首相は2日に年金制度に関するマニフェストの見直しに言及。さらに3日には子ども手当や医療、介護、雇用など根幹政策についても「当然それも含めた形で議論が行われる」と対象にすると明言した。玄葉光一郎国家戦略担当相(党政調会長)も同日の予算委で「社会保障分野は先行して4月に(マニフェストの)検証を終える」と述べ、民主党の岡田克也幹事長は記者会見で「マニフェスト取り下げではなく、議論をするためにハードルを下げている」と苦しい釈明をした。
首相が次々とマニフェスト修正に言及したのは、修正を何とか与野党協議の呼び水にしたいからだ。仙谷由人代表代行が会長を務める「社会保障と税の抜本改革調査会」で検討を進め、社会保障分野は4月までに修正を終えたい意向だ。
しかし、修正に向けては二つの難題が待ち受けている。首相と対立する小沢一郎元代表に近いグループは修正に反対しており、同調査会での協議が難航するのは必至だ。
また、自民、公明両党は「修正するならば、衆院解散か内閣総辞職を」と求めており、首相の一方的な「修正発言」が与野党協力に結びつく可能性は極めて低い。
4月のマニフェスト見直し以前に、予算関連法案を年度内に成立させるのも厳しい情勢になった。予算関連法案は、公明党の協力で参院で過半数を得るか、社民党の協力で衆院での再可決に必要な3分の2の議席が必要だが、公明、社民両党とも菅政権との距離を広げている。
両党は予算委でも予算関連法案への批判を展開し、現時点では賛成が見込めない状況だ。
民主党の中堅議員は「いくら修正すると言っても自民、公明は与野党協議に乗ってこないだろう。菅首相が予算審議で行き詰まる『3月危機』がいよいよ現実化するのではないか」と語った。【大場伸也】