2011年1月20日 22時27分 更新:1月21日 1時25分
国土交通省は20日、関西国際空港と大阪(伊丹)空港の経営統合法案について、大阪市内で地元自治体や経済界と意見交換会を開き、中国から関空へ原則自由な乗り入れを認め、国際拠点(ハブ)空港機能を強化する経営改善策を提示した。運営権売却の工程や将来の収支予測も明らかにし、統合法案について事実上の地元合意を得た。国交省は3月上旬に法案を国会に提出する予定で、関空は新たな枠組みで経営再建を進める。
ハブ機能強化策の柱として、関空と中部国際空港への中国の航空会社の便数発着枠(現在は週189往復)を20日付で暫定的に取り払った。航空会社間で路線や便数を自由に設定できる「オープンスカイ」(航空自由化)交渉は現在、日中間で進んでいない。国交省は相互乗り入れの大原則を崩し、今回、日本側の中国乗り入れ実現を問わない異例の措置をとる。国交省は、中国からの乗り入れ自由化を関空の発着数増加の根拠とすることで、ハブ空港としての位置付けを明確化した。また、それに伴って発生する関空から伊丹へ路線振り替えの可能性も示し、「将来的に廃港につながる」との地元の懸念を払拭(ふっしょく)し、24日召集の通常国会までに地元合意にこぎつける狙いがあった。
また、相手国を経由して第三国に運航する「以遠権」を積極的に活用し、東アジア・東南アジア各国との自由化も11年度中に実現を図る。関空を拠点に全日本空輸などが設立するLCC(格安航空会社)が、こうした海外からの乗り入れの受け皿となることで、空港の活性化につなげる。
このほか、関空の借金返済に充てる運営権売却について、統合2年後にあたる14年度売却を想定。この時点での負債全額に相当する約1兆2500億円で一括払いのほか、頭金4000億円、8000億円、1兆円で残額を30年分割、45年分割で支払う複数案を示した。統合10年後の営業収入は年1446億~1771億円になると想定するが、裏付けは示さなかった。
統合法案は、現関空会社の運営と土地保有を分ける「上下分離」方式で、12年4月を目標に、国100%出資で「統合事業運営会社」を設立する。関空をハブ空港と位置づけ、年間40億円以上の利益を生み出している伊丹の事業価値を活用することで企業価値を向上させ、経営の立て直しを図る。【新宮達】