2011年1月19日 20時22分 更新:1月20日 1時13分
【ワシントン草野和彦】オバマ米大統領は、中国の胡錦濤国家主席を国賓で迎え、厚遇する一方で、これまでになく強い態度で、中国に対して国力に見合った「責任ある行動」を求めようとしている。経済や安全保障問題での取り組みだけでなく、これまで「軽視している」と批判されてきた人権問題の改善も、強く訴える方針だ。
胡主席は06年にも米国を公式訪問したが、国賓ではなかった。人権問題を重視する当時のブッシュ政権が国賓として招いたのは「インドやオーストラリアなど民主的な同盟国」(元政権高官)だけだった。
一方でオバマ大統領は18日夜、胡主席をホワイトハウスでの私的な夕食会に招待した。さらに19日朝の歓迎式典では、21発の礼砲や国歌演奏を行い、儀礼や体面を重んじる中国側に最大限の配慮を示そうとした。
だが、ノーベル平和賞受賞者の民主活動家、劉暁波氏を拘束したままにしている中国の指導者を国賓として迎えることには、米国内に根強い反発が残っている。ホワイトハウスは「米中関係の重要性」を考慮して、19日の公式夕食会に民主、共和両党の指導部を招待したが、下院のベイナー議長(共和)は理由を明らかにしないまま欠席。人権問題などでの反発が背景にあるとみられている。
人権はもともと米外交の柱の一つだが、オバマ政権発足間もない09年2月、クリントン国務長官は訪中に際して、人権問題を事実上「棚上げ」し、中国との協力構築を優先するとの発言をした。
だが中国とはその後、イランや北朝鮮の核開発や人民元切り上げなどあらゆる問題で対立。米国内には、軍事・経済力を背景に非妥協的な態度を取る中国への反発が高まった。
クリントン長官も今月14日の演説で、中国の台頭は「オープンでダイナミックな世界経済と、(北東アジアの)地域の安定を確保してきた米国のパワー」に支えられてきた結果だと指摘。「21世紀の大国になることに伴う義務」の一つとして、「普遍的権利」である人権の尊重を訴えた。
ギブス大統領報道官は18日、劉氏の問題と関連して「大統領は(劉氏拘束を)決めた人たちと直接話すことを選んだ」と説明。胡主席を厚遇する見返りとして、人権状況改善を中国に要求していくことを強調した。