2011年1月19日 10時11分 更新:1月19日 10時38分
石川県能美市の自宅で09年、弟(当時30歳)を刺殺したとして殺人罪に問われた、姉の無職、水上三奈子被告(34)に対する裁判員裁判の判決が18日、金沢地裁であり、神坂尚裁判長は懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役7年)を言い渡した。
判決によると、水上被告は09年9月22日午後8時ごろ、自宅で弟の背中を包丁(刃渡り25.5センチ)で刺し、死なせた。弟は以前にも家族に暴力を振るっており、当日も台所で包丁を取り出したところを水上被告が奪い、母親に暴力を振るおうとしたため刺した。
弁護側は正当防衛を主張し無罪を求めたが、判決は「防衛行為が許される許容限度を超えている」と退けた。また、殺意についても、「死ぬかもしれないと認識していた」と未必の故意を認定した。ただ、「母に対する暴力から防衛するためだった」と過剰防衛を認めて刑を減軽し、殺人罪では珍しい執行猶予を付けた。
この事件では、被告に寛大な処遇を求める約1万2000人の署名入り嘆願書が金沢地検に提出されていた。
判決後、裁判員経験者ら4人が会見に応じ、「実刑か執行猶予か」で最も悩んだと胸中を語った。30代の女性は「人を死なせたという結果と、普通の生活を送っていた同世代の水上被告に突発的に起きた事件という背景を考えると、本当に悩んだ」。40代の会社員の男性は「同情すべきだと思った」と話す一方、「結果は重大。忘れずに生活してほしい」と被告への要望も。
金沢地検は「量刑が求刑を大きく下回っているので、判決内容を十分に検討し適切に対応したい」とコメントした。【宮本翔平】