2010年12月31日 19時47分 更新:1月1日 0時24分
【ブリュッセル福島良典】欧州連合(EU、加盟27カ国)のジル・ド・ケルコーブ・テロ対策調整官は01年9月の米同時多発テロから10年にあたり、毎日新聞のインタビューに応じた。調整官は「テロの脅威がより多様になった」と指摘、反テロ啓発教育などを通じて若者の「過激化」を防止する必要性を強調した。
50人以上の死者を出した05年7月のロンドン同時爆破テロ事件以降、欧州で大規模なテロは起きていないが、調整官は「脅威は依然、存在している。中央集権化された指揮系統のある組織(国際テロ組織アルカイダ)が『9・11』を実行した当時に比べると、脅威は非常に複雑になり、より多様化している」と分析した。
具体的な脅威として、(1)アルカイダ本体(2)ペルシャ湾岸や北アフリカなどのアルカイダ系組織(3)欧州に暮らす移民系などの若者が紛争地の「聖戦」に身を投じ、欧州に舞い戻る「外国人戦士」(4)欧州に生まれ、育ち、インターネットのイスラム系ウェブサイトなどを通じて過激化する「ホームグロウン・テロリスト」--を挙げた。
その中でも、各国情報機関が動向を把握しにくい「外国人戦士」の増加に懸念を表明、防止対策として「一部の人々を引き付ける『聖戦』が実際にはいかに醜いものかを示すことが重要だ」と述べた。また、危険なウェブサイトを当局が閉鎖できる欧州の制度にならい、米国もサイト対策を強化すべきだとの考えを示した。
一方、多数のイスラム移民を抱える欧州の事情を踏まえ、「宗教とテロを関連づけることは避けなければならない。レッテルを貼れば反発を生む」と指摘、差別をなくし、教育と雇用を促進する必要を強調した。さらに、加盟国がテロ対策で連携を深めると共に、EUが中東和平やアフガニスタン安定化への取り組みを強化することが重要だと述べた。