東証:出遅れ鮮明 政府対策効果薄く

2010年12月31日 9時25分 更新:12月31日 10時16分

 10年の東京株式市場は、大納会だった30日の日経平均株価の終値が1万228円92銭と昨年末から3%下落して取引を終えた。急激な円高が相場を圧迫したことに加え、民主党政権の成長戦略も「力不足」と受け止められて日本株離れが進み、売買代金や売買高も低迷。米欧の市場は08年9月のリーマン・ショック前の株価を回復したが、日経平均はリーマン前の水準(1万2000円台)に届かず、出遅れが鮮明となった。【田所柳子、大久保渉】

 株価の重しとなったのは春以降の急激な円高だ。世界経済の回復期待から、日経平均は4月5日に1万1339円30銭の年初来高値をつけたが、4月下旬以降、欧州信用不安が拡大。ユーロが売られ、円高も進み、日経平均は急落して5月下旬には1万円の大台を割り込んだ。夏以降は、米国の景気刺激策終了や雇用回復の遅れを受け、市場で世界経済の「二番底」懸念が浮上。円は対ドルで急伸し、日経平均は8月31日に8824円06銭の年初来安値をつけた。

 11月には米連邦準備制度理事会(FRB)が追加金融緩和を決定。投資資金が株式市場に戻り始め、米国や英国、ドイツなどの株価はリーマン前の水準を回復した。ドイツはユーロ安が輸出を後押しした。日経平均も11月18日に1万円台を回復したものの、その後は足踏みが続いた。

 民主党政権は円高・デフレに対応するための追加経済対策を10月に策定し、11年度税制改正大綱には法人税減税も盛り込んだ。だが、株価を押し上げる力は乏しかった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘シニア投資ストラテジストは「11年度予算編成は財源の帳尻合わせに終わり、成長戦略やデフレ脱却への取り組みが中途半端」と指摘する。外国人投資家は買い越しとなったものの、「ヘッジファンドが目先の利益を狙った短期売買が中心」(アナリスト)という面がある。

 一方、先進国の金融緩和は新興国への資金流入を招き、新興国の株価の10年の年間上昇率は韓国が21%、インドが16%に達した。中国は不動産投資規制の強化などを受けて株価が下落したが、インフレ圧力は強く金融引き締めに転換。欧州信用不安もくすぶっており、年明け以降の相場展開に不安を残した。

 ◇依然根強い円高圧力

 10年の円相場は、15年ぶりの円高水準に急騰し、日本経済を翻弄(ほんろう)した。11月以降は円高が一服していたが、30日の東京外国為替市場は一時、1ドル=81円台前半と11月上旬以来の円高水準をつけ、円高圧力は根強い。

 円相場は4月上旬に1ドル=95円近くまで下落していたが、その後の欧州信用不安や米経済の回復鈍化から、ユーロやドルに比べて相対的に安全とされる円を消去法的に買う動きが加速した。8月10日にはFRBが事実上の追加金融緩和を決定。日銀が追加緩和を見送ったことから円買いに拍車がかかった。

 1ドル=82円台に突入した9月15日、政府・日銀は6年半ぶりの円売り介入を実施。いったんは円安となったが、効果は長続きせず、日銀は10月に実質ゼロ金利政策の復活など「包括緩和」に踏み切った。だが、FRBがさらなる金融緩和を示唆したことを受け、円相場は11月1日の海外市場で1ドル=80円21銭に上昇、95年4月につけた戦後最高値(1ドル=79円75銭)に迫った。

 FRBは11月3日、6000億ドルの長期国債買い入れを軸にした追加緩和策を決めたが、米金融緩和で資金が流入し、インフレや通貨高に見舞われた新興国から反発が相次いだ。市場では「米国は一段の緩和には動きにくくなる」との観測から徐々にドルが買い戻され、円相場は83~84円台で推移した。

 ただ、今月中旬から円がじわじわと買い戻され、30日の東京市場の午後5時時点の円相場は、前日比55銭円高・ドル安の1ドル=81円50~52銭。来年の動向について、市場では「米景気が回復軌道に乗ればドルに買い戻しが入る」との見方がある一方、「米景気の回復が遅れると戦後最高値を突破する可能性もある」との指摘が出ている。

top

PR情報

スポンサーサイト検索

アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド