遺灰:金歯狙いで受注競争激化 ずさん処理懸念も

2010年12月30日 12時47分 更新:12月30日 13時18分

 火葬後に遺族が持ち帰らない遺灰(残骨灰)がずさんに処理され、有害物質による土壌汚染を招く恐れがあるとして、厚生労働省は自治体に実態を調査するよう通知した。残骨灰に含まれる金歯などが金相場の上昇によって高く売れる。「1円落札」が相次ぐなど処理業者の受注競争が過熱→処理経費抑制→残骨灰のずさんな処理--という“負のサイクル”の懸念が指摘されている。

 通知は今年7月、都道府県・政令市に残骨灰の適正処理や有害物質の定期的測定を求めた。残骨灰は通常、受託業者が溶融・粉砕の処理後、納骨堂に納めたり、火葬場敷地内の土中に埋めるなどしている。廃棄物に該当せず、具体的な処理方法を定めた法令はない。厚労省調査で、火葬段階でひつぎを載せるステンレス製台の化学反応により毒性の強い六価クロムなどの有害物質が発生し、包含されていることが分かった。

 一方、受注競争を激化させているのが、残骨灰に含まれる金、銀、プラチナなど貴金属だ。受託業者は処理過程でこれらを抽出、売却しており、「1円落札」でも十分利益が出る。10年3月、浜松市が実施した残骨灰処理業務委託の入札では参加6業者の応札額はすべて「1円」。くじで神戸市の業者が落札したが、8年連続の1円落札。静岡市でも4年以上続いている。

 金相場が背景にある。08年秋の金融危機以降のドル安を受け、ドルに代わる「安全資産」として高騰。名古屋市によると、09年度は残骨灰59トンから金3.9キロ▽銀13.6キロ▽プラチナ0.1キロ▽パラジウム4キロ--の計21.6キロを抽出、売却額は約1700万円に上り、07年度1080万円、08年度1450万円と増加の一途をたどる。静岡市の担当者は「金相場の上昇で処理業者が乱立している」と話した。

 一方、独自の取り組みを始めた自治体もある。福岡市は08年度、残骨灰の所有権が市にあるため、貴金属の売却益の返還を委託業者に義務づけた。担当者は「低価格落札が続けば適正処理されない恐れがあった」。名古屋市や東京都も似たような返還制度を設けている。だが、「遺灰を収入源にするのは市民感情を考えると難しい」(静岡市)と頭を悩ませる自治体も多い。浜松市は来年度以降、入札額の下限を設定する最低制限価格の導入を検討している。

top

PR情報

スポンサーサイト検索

アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド