中国企業:対日買収が加速 飲食・物流にも触手

2010年12月30日 10時33分

 中国企業の対日M&A(企業の合併・買収)が加速している。M&A助言会社レコフによると、10年1~11月までで36件と、過去最多だった09年(通年で26件)を上回った。製造技術獲得を狙ったメーカーや、ブランド力に目を付けた大手アパレル「レナウン」買収などに加え、最近はM&Aのターゲットが飲食チェーンや物流関連にも拡大。買われる日本企業側にも、巨大市場を抱える中国資本の傘下に入ることで再建を果たそうとする機運が出ている。【山本明彦、小倉祥徳】

 日本全国でラーメンチェーン「どさん子」約360店を展開するホッコク(東京都千代田区)は今夏、中国のアパレル事業経営者、孫小飛代表から約3億円の出資を受け入れた。筆頭株主(出資比率13・5%)になった孫代表は来日時にはホッコクの従業員に「我々はファミリー。一緒に頑張ろう」と気さくに声をかける。

 今春、日本での投資案件探しに来日した孫代表がホッコクのチェーン店に立ち寄ってラーメンを食べたのが出資のきっかけ。「この味なら、中国でも受ける」と気に入った孫代表は買収を即断した。

 ラーメン業界では有名ブランドの「どさん子」。しかし、値下げ競争の激化などで業績は悪化し、10年3月期は9億4200万円の最終(当期)赤字に転落した。日本食人気の高まる中国進出で起死回生を図ろうと、昨年6月に上海に拠点を設けたが、チェーン展開に向けた現地での人脈や資金調達先を思うように確保できなかった。

 そんな矢先、孫代表による買収話が持ち込まれた。話はトントン拍子で進み、今年4月には基本合意、「どさん子」の中国展開に道筋が付いた。積極果敢な行動で知られる「温州商人」がルーツの孫代表は、中国に今後3年で「どさん子」チェーン1000店を出店する計画だ。ホッコク経営陣には当初、中国資本への警戒感もあったが、今は「孫代表に逃げられないように頑張る」と話すほど親密だ。

 ◇人脈や資金で恩恵

 一方、中国の大手金融グループ傘下のファンド「CITICキャピタル・パートナーズ」は日本向け2号ファンド(180億円)を作り、買収案件を物色している。今夏には、特殊段ボールの製造販売会社「トライウォール」(東京都千代田区)の発行済み株式の過半を既存株主から購入した。

 トライ社は重機械や部品などの輸送用強化段ボールを手掛け、売上高約90億円。ジャスダック上場寸前までこぎ着けたこともあったが、08年のリーマン・ショック後の不況で頓挫した。CITICキャピタルは、急拡大する中国やアジアの物流需要を取り込んでトライ社の業績をアップし、14年をめどに香港株式市場に上場させる方針。トライ社の鈴木雄二社長は「日本では(中小やベンチャー企業が)上場しても資金調達には限界がある。急成長する中国なら、豊富な投資マネーが期待できる」と話す。

 CITICキャピタルは、中国の金融コングロマリット「中国中信集団」傘下の運用会社。中信集団は建設、機械などの事業会社も抱え「豊富な資金力に加え、販路拡大など再建プランを提案できる」(中野宏信・日本代表)のが強みだ。04年には日本向け1号ファンド(170億円)を組成、高級洋食器メーカー「鳴海製陶」などに投資。鳴海製陶は北京や上海などのデパートやレストランに取引先を拡大し、中国での売上高を2年でほぼ倍増させている。

 日中間のM&A仲介を手掛ける「マーチャント・バンカーズ」の古川令治会長は「日本企業の中国進出の成否は現地でのコネや人脈がカギを握る。このため、日本側にも中国資本へのニーズが出始めており、M&Aの動きはさらに拡大する」と予想する。

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