浮動マネー:国債償還と定額満期で官民攻防 来年13兆円

2010年12月30日 9時11分

 個人向け国債の償還とゆうちょ銀行の定額貯金の満期が重なり、11年中に13兆円超の個人のお金が市中に出回る。09年の約4倍の規模に達する「浮動マネー」を取り込もうと、民間金融機関が投資信託などの売り込みをかける一方、ゆうちょ銀行と国債を出す財務省は資金流出を抑える対策に躍起だ。【清水憲司、和田憲二】

 5年満期、固定金利型の個人国債が1月17日、初の償還を迎える。この日だけで1兆円が個人投資家の手元に戻り、年間の償還額は計約4兆円。

 ゆうちょ銀の定額貯金(最長10年)も、金利が8%に上がって預け入れが殺到した80年4月以降、10年ごとに大量満期の波を繰り返してきた。11年は、10年とほぼ同じ水準の10兆円規模が満期を迎える見通しだ。

 国債、定額貯金とも利率は購入、預け入れ時の3分の1程度まで下がっている。民間金融機関は「低利回りを嫌って、他の金融商品への乗り換えを目指す『浮動マネー』になる」と、取り込み作戦を展開する。

 みずほ銀行は、個人国債の保有者は過半数が60歳以上で、金融資産の大半を預貯金で運用していることから、低利でもリスクの低い金融商品を望んでいると分析。安全性の高い国内社債、国債を組み込んだ投資信託を10月から、従来の1種類から5種類に拡充した。

 個人国債保有者は「年金生活者も多く、個人年金保険へのニーズが高い」(りそな銀行)とみられるため、保険各社の動きも活発。日本生命保険は12月1日、全国約50の提携金融機関窓口で、一時払い終身保険の新商品を発売した。契約後15年目までの死亡保険金と解約払戻金の額を購入時に確定するため、元本割れリスクを抑えられることを売り物にしている。

 官の側も防戦に必死だ。

 ゆうちょ銀は「定額貯金への再預け入れを促したい」と、3年以上の預け入れを条件に金利を年0.1%上乗せするキャンペーンを来年3月末まで実施。財務省も個人国債テコ入れのため、来年7月発行分から10年物個人国債の利率決定方法を変更。現状の市場金利を基に10年物の利率をはじき出すと、現行方式では年0・4%程度だが、新方式にすると年0・8%程度に上昇する。銀行などの預金より高めにすることで、個人国債の魅力を向上させたい考えだ。

 【ことば】個人向け国債

 個人投資家向けに政府が発行している国債。03年の発行開始当初は10年満期の変動金利型のみだったが、06年に5年満期の固定金利型も加えた。いずれも1月、4月、7月、10月の年4回発行している。今年7月からは、購入者拡大のため、3年満期の固定型を毎月、発行している。

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