2011年2月9日12時48分
サングラスに全身黒ずくめの服装で今福彰俊さんが池田中に現れた=大阪府池田市
今福さんの口調が熱を帯びてくるにつれ、聞いている生徒たちの目も輝いていく。
「黒っぽいオーラ」に圧倒されっぱなしだった今来君は「枠にはまらない生き方がほんまにあるんや」と感心した。
今来君は友達とバンドを組んでいる。将来の夢はギタリスト。受験を控え、最近は感情の起伏が激しくなったと感じる。「『悲しい』と『楽しい』が交互に来る感じ」。落ち込むと「自分には何もできない」と思ってしまう。
そんな時、どうするの?
「自分の部屋で、じっと時間が経つのを待つっていうか」
ギタリストになる方法はわからない。でも、今福さんの話を聞いたら、「中学ン時はどんな夢でも見ていいんだ。落ち込むことはないんやな」と安心した。勉強の合間に、一日少しの時間でもギターにさわるようになった。
身を乗り出して聞いていた児玉君の夢は考古学者。「無理だと決めつけず、今からでもがんばれば、自分もすごいところまで行けるかも」。そんな手応えを感じた。「パワー、もらいました」
地域の大人が、当たり前のように学校に出入りする。そんな池田中の日常を象徴する場所が校舎の3階にある。次回は「まな部屋(べや)」と呼ばれるその教室のお話を。
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地域の力を学校へ。池田中は、教師と生徒という「タテの関係」でも、友達同士の「ヨコの関係」でもない「ナナメの関係」を重視する。地域に支えられながら育つ子どもたちの姿を伝える。(この連載は文・阿久沢悦子、写真・竹花徹朗が担当します)