2011年2月9日12時48分
サングラスに全身黒ずくめの服装で今福彰俊さんが池田中に現れた=大阪府池田市
その人が入ってきた時、大阪府池田市立池田中学校の多目的ホールに集まった3年生から、「おおー」と声がもれた。
筋肉質のごつい体。あごにはヒゲ。黒い革のスーツに身を包み、凝ったフレームのサングラスをつけている。
今来(いまき)淳平君は「うわ、黒っぽいオーラの人やなあ」と驚いた。児玉周平君は「どんな話、すんねやろ」と身を乗り出した。
“その人”は池田中OBの今福彰俊さん(42)。毎年11月にある進路指導講演会に招かれて3年目になる。少し早口で始めた内容がまたすごかった。
「中学の時はすごいヤンチャ。けんかが強い、手が早い。先生を一番殴っとった。でも間違えんといてや。ヤンチャがエライんやないで」
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池田市は大阪の北部に位置する人口10万人ほどのベッドタウン。池田中は駅から歩いて10分ほどの住宅街にある。
公立中には様々な生活環境で育った子どもが集う。社会が多様化し、教師のモノサシだけでは対応できないことも増えた。ならば学校を近所に開放し、「ご近所力」にとことん頼ろう。そんな思いで4年前、周辺住民らを巻き込んだ学校応援団「マイタウン・プロジェクト」を立ち上げた。約300人が登録し、日常的に生徒とかかわる。
今福さんが呼ばれたのもその一環だ。身近な先輩の一人として、ケンカに明け暮れた「ヤンチャな男」が空間デザイン事務所の社長になるまでを40分かけて語った。
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学校で暴れていたのは、目的がなかったから。中3の春、ある教師に「足が速い。君はダイヤモンドの原石や」と言われて一変した。「よし、高校へ行ってラグビーやろう」。推薦でスポーツの強豪校へ。大卒後、広告会社勤務を経て空間デザインの道に進み、28歳で社長になった。「夢を持って走ったら支援してくれる人に出会う。チャンスは、こうありたいと思っている人だけにくるねん」