「料理酒」って何だ?
さもない「煮魚」です。スーパー行ったら真鱈が安かった。よく鍋物に使うんだが、あまりキャラの強い魚ではないので、都合がいいわけです。というのも、今回のテーマは「調味料が料理に与える影響」というわけで、醤油、味醂、日本酒と、まぁ、煮魚には必ず使うわけだが、さて、みんな、何を使ってますか?
ポピュラーなのは、醤油では「キッコーマン」「ヤマサ」とか、味醂では「タカラ本みりん」とか、日本酒は「料理酒」だったりするんだろうが、つうか、おいらも今まではそんな組み合わせで使っていたんだが、最近、日本酒のエントリあげるようになって、一夜漬けで日本酒の作り方について勉強していて、ふと、気になった事があるわけですね。それは、「料理酒って何なんだ?」という事です。
料理酒には、「酒」として飲めないように塩が混入してあるらしい。逆に言えば、塩が入ってなければ「日本酒」になるわけだ。もっとも、日本酒と言っても醸造酒ではない。いわゆる三増酒でもなく、「合成酒」というヤツです。大吟醸とか山廃とかいう時代に「合成酒」と言われても「なにそれ?」という人も多いだろうが、日本酒風飲料といったところだろうか。
合成清酒(ごうせいせいしゅ)とは、アルコールに糖類、有機酸、アミノ酸などを加えて、清酒のような風味にしたアルコール飲料(いわゆるお酒)である。現在は風味付けのために、醸造された日本酒の成分も数%混入されている場合が多い。
清酒に比べて酒税の税率が低いので価格が安いことから、現在も清酒の代用として普及しており、また料理酒としてもよく使われている。
なお日本では、酒税法上合成清酒のアルコール度数は「16度未満」であることが求められる(酒税法第3条8項)[1]。
とWikipediaに出ているわけだが、最初に売りだされたのが1923年で、最盛期が終戦直後なので、今ではほとんど見る事もないわけだ。静岡県の酒造メーカーでも、今ではほとんどが本醸造で、三増酒ですら作ってないところが多いんだが、伊豆ではまだ「力正宗」というブランドが根強く生き残ってますね。こちらのサイトに法事で配られた「力正宗」のカップ酒が出ているんだが、「甲の焼酎に日本酒の香味を加えた、すべての成分が素性を保障する健康・安全なアルコール飲料」とある。すべての成分が化学的に合成されたモノで、素性が判っているので、安心、安全だ、という、まぁ、そういう時代の商品です。コレは、大仁の東洋醸造で作られていた。東洋醸造では、三増酒の「菊源氏」というのも作られていて、伊豆半島の爺さんというのは、今でも「力正宗」や「菊源氏」しか飲まない、という人も多いです。焼酎ブームなんぞには目もくれないw 「あんなモノは貧乏人のドカタの飲むもんだ」と言う。科学の力で、アミノ酸やらアルコールやら合成して酒を作るというのが、時代の最先端だったわけです。
おいらの母親というのは薬剤師で、終戦直後に協和発酵というところに勤めていたんだが、なんせモノのない時代、仕事もヒマだったので、男の社員はウイスキーを、女の社員は化粧品を作って遊んでいたというんだが、食い物が満たされると、次に考えるのは、男は酒、女は化粧品という事ですねw まぁ、その時代、まだ農村ではこっそりとドブロク作っていたりするんだが、ところで有名な話なんだが、旨味調味料である味の素こと、グルタミン酸ソーダを発明したのは日本人ですね。その延長上に、こうした合成酒の技術というのはあるわけで、日本人の得意とするところです。それでせっせと、戦前から戦後にかけて怪しい酒を作りまくるんだが、今でもビール風飲料というのがありますね。ああいうのは、外国ではあまり流行りません。日本人の器用さを象徴するような技術なんだが、こうして作られた合成酒というのは、税制が違うのもあって、価格が安い。たとえば、力正宗の一升瓶が638円だったりするんだが、ほとんどコーラ並みの値段ですw で、スーパーで売っている「料理酒」と称するモノは、この合成酒が多いわけです。でも、アルコール自体は加熱すると飛んでしまうので、残るのは糖類、有機酸、アミノ酸など。単なるアルコールを日本酒っぽく見せかけるために添加されたモノだけが残るわけで、それって、旨味調味料そのものを使うのとどこが違うの? という気もしないでもない。実際、グルタミン酸ソーダが使われたりするわけです。
また、三倍増醸清酒、いわゆる三増酒というヤツなんだが、
三増酒(三倍増醸酒)とは、醪をしぼる前に、その醪から生成すると見込まれる清酒の2倍量のアルコールに、あらかじめ調味料を入れて調味アルコールとし、醪に加えて圧搾にかけ、結果的に約3倍の製成酒を得るというものであった。合成清酒や混和酒と区別するために、調味料として使える原料はブドウ糖、水飴、乳酸、コハク酸、グルタミン酸ソーダ、無機塩類にかぎられた。
合成酒とは違って、一応は清酒の作り方がベースになっているものの、それを手品で三倍まで増量しちゃおうという、まぁ、米不足の時代の遺物です。終戦直後は、酒というと、「飲んだら失明」とか「下手すりゃ死んでしまう」というような、「メチル」なんてぇのがあったくらいなので、科学の力で不純物を排して、化学的に合成されたモノが偉いんだ、という時代です。それを反映して、合成酒である「力正宗」は「健康の酒」というのがキャッチフレーズだった。コレと、食料不足にともなう酒造米の配給制とが、酒造業者が美味しい日本酒を作ろうという努力を無駄なモノにして、日本酒はダメになって行った。消費者は日本酒から離れて、ウイスキーやビールに向かいます。まぁ、日本のウイスキーというのも、インチキ焼酎である事に変わりはないんだが。
ここら辺の日本酒の歴史というのは、調べてみると面白いんだが、真鱈の煮付けから外れるので置いといて、だ。今や、コメが余って困っている時代に、合成酒や三増酒でもなかろうというので、おいらも料理酒を純米酒にグレードアップしようというので、色々と試しているわけだが、ご家庭の奥さんというのは貧乏臭いのが取り柄なので、どこまで行っても料理酒は安酒です。でも、おいらは旦那芸の料理なので、ここは純米酒・花の舞を使います。癖がない酒なので、手頃だろう。
また、味醂というのも偽物が多くて、いわゆる「みりん風調味料」なんだが、
「みりん風調味料」は、醸造用糖類(ブドウ糖や水あめ)にグルタミン酸や香料を混合したもので、みりんとは原料や製造方法が大きく異なります。アルコール分は1%未満。
つまり、単なる水飴と味の素です。これじゃ、何のために味醂を使うのか判りませんね。水飴と味の素でいいじゃんw で、本物の味醂といえば「本みりん」なんだが、これにも二種類ある。味醂をどうやって作るのかというと、
蒸したもち米に米麹を混ぜ、焼酎または醸造用アルコールを加えて[1]、60日間ほど室温近辺で熟成したものを、圧搾、濾過して造る。熟成の間に、麹菌に由来するアミラーゼの作用により、もち米のデンプンが糖化され、甘みを生じる。またコハク酸やアミノ酸(麹菌に由来するプロテアーゼの作用により生じる)が独特のコクを生じさせる。熟成時に約 14% 程度のアルコール分があるので、酵母菌によるアルコール発酵(や雑菌の繁殖)が抑えられている。その結果、糖の消費が減り、日本酒よりも甘くなる。
ここで注目したいのは、『焼酎または醸造用アルコール』という部分です。どういう違いがあるかというと、
旧式ミリンは、本格焼酎(乙類)を使い、伝統的な製法で長期間熟成させて作ります。色は褐色が強くなります。 新式ミリンは、新式焼酎(甲類)を使い、比較的短期間の程度の熟成で作られます。もち米を液化して使うなどの 近代的な製法が用いられる事もあります。色は薄くなります。
旧式みりんというのは、乙類の本格焼酎を仕込みに使い、新式みりんは醸造用アルコールと適当な糖類で仕込むわけだ。短期間で大量に作れるので、スーパーで売っている「本みりん」というのはたいていこのタイプです。まぁ、旧式だと大量生産出来ないので仕方ない。で、今回はおいらも、とっておきの秘密兵器、三州三河みりんを持ち出した。一般的な本みりんが「蒸したもち米と米麹にアルコールおよび水あめを加え、香味を調整して2か月で造ります」というモノなのに対して、こちらは
上質なもち米を原料に使用し、和釜で蒸煮。 仕込み後のみりんもろみを長期糖化熟成します。 みりん本来の製法で、乙類焼酎(米焼酎)を用います。 醸造・熟成期間は2年がかりです。
というわけで、手間がかかるわけですね。ちなみに、仕込みに使う焼酎は、うるち米を原料に清酒を仕込み、その清酒と酒粕を使って米焼酎を作って、それを使っているわけです。
もともと「味醂」という調味料はあまり普遍的な存在ではなく、江戸の料理、特に、鰻のタレと蕎麦汁で使われていたくらいで、家庭で使われるようになったのは1950年代以降だというんだが、コレも無粋な法律の関係で、アルコールを含んでいるから「酒」なので、酒屋でなきゃ売ってはいかん、とか、原料米の配給制とか、足を引っぱる要素が多くて、本物が普及せず、偽物ばかりが普及してしまった。やっと本みりんがスーパーで売られるようになっても、速成の新式味醂ばかりです。で、近所のスーパーや酒屋で買える範囲では、この三州三河みりんだけが本物の旧式みりんなので、もう、選択の余地はないですね。
ちなみに、この会社は明治43年創業の資本金1000万の会社です。おいらの持論、「歴史が古くて、資本金が1000万の会社はホンモノ」という条件に当てはまりますねw 地道にしっかり仕事して儲けている会社は増資なんかしません。
三州三河みりん 720ML 価格:(税込) 発売日: |
さて、あとは醤油なんだが、以前取り上げた修善寺醤油の特許、薬膳醤油です。普通の醤油と比較すると、原材料が多様なせいなのか、味がまろやかで独特です。
というわけで、ありふれた変哲もない真鱈なんだが、調味料をすべて見直して、改めて作ってみたんだが、さて、お味は?というと、日本酒、味醂、醤油と、すべてが旧式製法で、色々と「不純物」を含んでいるわけです。分析もしきれないような糖類とかアミノ酸とか。そうした諸々が絡みあって醸しだすハーモニーが、オーケストラのように重厚に響きます。今までの調味料で作った料理が、PCで打ち込んで作った安っぽいJ-POPみたいです。・・・と、大袈裟に締めておこうw
熊本の方行くと味醂のかわりに「赤酒」って言うの使いますね。
赤酒
http://www.zuiyo.co.jp/akazake/
投稿 黒三 | 2011/02/16 01:23
野次馬さんは呑んでくっちゃべっていれば最高。いまさらお酒の勉強、やめてよw
投稿 阿井卯栄男 | 2011/02/16 01:23
うちは料理酒は純米酒ですよ。
投稿 ああ | 2011/02/16 02:01
おもいの他ながいエントリーで読み応えがありました♪(^^)
ところで、日本酒じゃなくてもうしわけないんですが、ギリシャ料理のみせいってギリシャワインのんできますたよw うまかったっす。残念ながら銘柄や値段はわかりませんが、おいらのボスが選んだ奴だし、なかなかいいお酒だったんじゃないかと。
ふだんおいらが白ワインおいしいとおもうことはまれなので(おいらすきなのはたいてい赤です)、うん。
そんなに高いお酒でなくて、わからないなりにも、だんだん善し悪しがすこしずつわかるようになってゆく過程はたのしいですよね。
投稿 ケニーマコーミック(本物) | 2011/02/16 07:35
書き忘れたけど、煮魚がおいしそうです♪(^^)
投稿 ケニーマコーミック(本物) | 2011/02/16 07:38
うまそうに撮れすぎだよ
うまそうに盛りすぎ
実際は・・・??
どうでもいいか
投稿 駿府Joe | 2011/02/16 09:05
丈夫な子に育てたいって思うと体に入るものに
自然と気を使うようになるんじゃないかしら
母がそうだったから似たようなことやってるし
離乳食ってなんだ?ってとこからはじまって
粗食志向になってきたんだけど
材料が質素だと調味料にこだわらざるを得ないので
美食っていうのとはちょっと違うかしらん
野次馬さんと調味料がかぶりつつあって
なんかコワイ(笑)
投稿 悩める奥様 | 2011/02/16 09:17
>日本のウイスキーというのも、インチキ焼酎である事に変わりはないんだが。
そこは、ちゃんと三鳥って書かないとwww
投稿 海DQN | 2011/02/16 09:42
>日本人の器用さを象徴するような技術なんだが
つか、必要悪なんだよねw食い物(酒)に関してはwww
すべてが「税金対策」なんだよね、発想の源がさwww
だから、法人税は上げないとダメ。
プラス、設備投資、開発費に対する控除、損金算入、そして高田の好きな小泉と竹中がやった退職金引当金の損金算入の廃止を元に戻す。カス公務員が税金食ってんのと違うのにwww
税率上げないと金使わないんだからさwww
そうそう、食い物の件で怒る国民性なのに産地偽装には優しいカス公務員www
なんでなんだろうねwww
投稿 海DQN | 2011/02/16 10:14
いつもはロム専ですが、初めてコメントさせていただきます。
静岡県日本酒シリーズ繋がりも兼ねられるかなと、勝手にオススメ。
料理酒に使用するなら、「杉錦 天保13年山廃純米」を推薦。
1升1900円前後ですが、低精米の山廃純米酒なのでアミノ酸やコハク酸数値が高めな味わいですので、魚介類にピッタリかと。
もちろん、そのまま飲んでも美味しいですが、酸度が高く個性的なお酒なので万人ウケはしないかもしれません。飲む温度帯も冷やよりもお燗向きです。
ちなみにこの蔵元は味醂や焼酎も造っています。
では、今後の静岡県日本酒シリーズ楽しみにしております。
投稿 半可通 | 2011/02/16 10:24
なるほど
レシピに料理酒とか赤ワインとかブランデーとか表示されていても
強制的に泡盛を使う私は間違っていなかった
と、思いたいでつ。
投稿 キッチンで泥酔日記 | 2011/02/16 10:43
>すべての成分が化学的に合成されたモノで、素性が判っているので、安心、安全だ、
とり・みき『冷食捜査官』シリーズを思い出したw
偽物食品ばかりになったら、ああいう未来も有り得るかもね。
投稿 イオンド大卒@携帯 | 2011/02/16 12:41
海DQNさんのコメの補足ですが
日本酒にも「本醸造」とか「純米」とか「吟醸」とか区分けが
ありますが、これって本当にただの区分けで、味についての
証明ではありません。
区分けさえ守れば、その範囲内でいくらでも手抜きの
酒は作れます。
その点ではフランスのAOCとはまったく違います。
日本のは税率の関係でお酒を区別しているだけで、
早い話が、税さえ取れれば味は関係ありません。
精米率も一つの目安にはなりますが、単に磨けば良い訳でも
無いと思います。現に80%の精米率でも美味しいお酒は
あります。
投稿 abe | 2011/02/16 16:40
酒の販売免許の無いスーパーで売るための(ry
投稿 海DQN | 2011/02/16 17:05
税金ね・・・
そういうわけのわかんない事
消毒用エタノール液IPのとき思ったわ
お酒とか缶ビールに
軽量カップみたいな目盛りを付けて
50cc ← ここまで税金
とかって表示するといろんな意味で
緊張感が持てるんじゃないかしらね
・・・あっ しまった!
海なんとかさんの応援っぽくなっちゃった
投稿 悩める奥様 | 2011/02/16 19:48
すんません、料理酒、みりん風調味料、
一リットル198円のモノ御用達で日々使っておりまする(((^^;;
週末の晩酌だけは純米吟醸になったんですが((((((((((^^;
(平日は発泡酒なのねん)
投稿 みさお | 2011/02/16 20:51
結局、明治以降のカス公務員が文化破壊してるんだよwww
税金を隠れ蓑にさwww
きっと薩摩のヤツが多かったんじゃない?www
乙類焼酎の税率とか考えるとさwwwwwww
投稿 海DQN | 2011/02/16 22:09
木曾の七笑。昔は料理酒と皆で莫迦にして終つてをりました。木曾出身の知合ひのキャラがさうさせたのでありますが。
投稿 積雲 | 2011/02/16 22:49
とある手作り鮭そぼろのレシピに、
「必ず、飲んでおいしいお酒を使うこと!」とありました。
他の本では、酒はだしの代わりにもなる、とも。
ところで煮魚の酒と水の割合はどんなもんでしょうか?
酒をたくさん使うと、お店の味に近づけるので
紙パックの純米酒を買ってきて、気兼ねなくドボドボ入れます。
かろうじて飲用に耐えうるお酒です。
投稿 sinn | 2011/02/16 23:30