2010年12月27日 2時30分
親の国民健康保険(国保)の保険料滞納で生じた「無保険の子」問題に関連し、大阪市内で10月末に保険証の有効期限が切れた子供のうち約3000人に1カ月半、保険証が渡らず、無保険状態になっていたことがわかった。市が当初、保険証交付の条件として親に来庁を求めたため。問題に取り組んできた民間団体は「子供が受診できない状況を作っている。本来は速やかに郵送すべきだ」と市に抗議した。子供の保険証の交付方法を巡っては各自治体で対応が分かれており、無条件で郵送する自治体がある一方で、大阪市と同様の対応をする自治体も少なくないという。
国保では保険料を滞納すると、通常証(期限1年以上)が、短期証(期限数カ月)に切り替わる。それでも滞納が続くと資格証明書が発行され、滞納が解消するまで保険証は受け取れない。「無保険の子」を巡っては昨年4月に中学生以下が、今年7月に高校生世代が国保法改正により相次いで救済された。親が滞納しても、子供には短期証(期限6カ月)が切れ目なく発行されることになった。
大阪市によると、親が資格証明書を発行されて救済対象になった子供と、短期証世帯の子供のうち、11月末時点で3000人分ほどの保険証が窓口に留め置かれたという。市生活福祉部では「短期証の交付に合わせて減免などの相談にも乗っており、本人の来庁が必要だ」と説明。年末年始に役所が閉まることなどを考慮し、今月中旬、取りに来なかった子供に短期証を郵送したが、1カ月半は保険証が手元にない状態だった。
厚生労働省は子供の保険証の交付について「できるだけ速やかに手元に届けるよう努めること」と市町村に通知しているが、具体的な方法は各自治体に委ねられており、対応はまちまちだ。横浜市は今年4月、7月に高校生世代が救済されるのを前に、市内の高校生世代約600人に期限1年半の通常証を郵送。堺市は10月末で保険証が切れる資格証・短期証世帯の子供約6350人に、10月中旬までに短期証を郵送した。
一方、大阪府熊取町では約70人分の子供の保険証が1カ月半、役所窓口に留め置かれた。問題に取り組んできた大阪社会保障推進協議会の寺内順子事務局長は「子供の病状は急変することがあり、そうなってから役所に相談に行くのは困難。子供の保険証を人質にしてはいけない」と批判している。【平野光芳】