2010年12月26日 2時34分
埼玉県の公立中学校で昨年度、校長会などによる公的テストを実施した学校が9割に上ったことが、県教委のまとめで分かった。テストは市単位や複数の自治体にまたがり行われ、偏差値や志望校ごとの順位を出す地域もある。90年代の業者テスト追放に合わせて学校現場から消えたはずの偏差値だが、進学指導を学習塾に頼る傾向が強まったことから「復活」した。【鷲頭彰子】
県教委によると09年度は423校のうち391校で公的テストが実施された。3年生約6万人が受けたとみられる。テストを作るのは中学の教師が中心だが、業者が問題作成、採点、データ作成をする地域もある。
さいたま市では校長会が主催し、約1万人が9月と11月の2回受け、得点や順位、志望校別の得点分布図などが示された。生徒に渡す資料に偏差値は表示されないが、教師は偏差値を把握し、生徒から聞かれれば答えることもあるという。
県教委は92年秋「偏差値にとらわれない進路指導を」と、中学校で行っていた業者テストの偏差値を高校側に提示しない方針を全国に先駆けて打ち出した。翌年2月、旧文部省は業者テスト追放の通達を出した。
公的テストは業者テスト追放以前から行われていたが、県教委は「第2の偏差値を生み出す危険性がある」として公的テストについても自粛するよう各市町村教委に求めていた。しかし、かえって偏差値を基に進路指導をする学習塾に生徒や親が頼る傾向が強まったという。このため県教委は06年11月「進路相談に活用できる資料が十分でなく、中学校に対する生徒・保護者の信頼感が損なわれる懸念がある」と、公的テスト容認に方針転換した。実施校は年々増え、09年度はほぼ県内全域での実施となった。
県教委義務教育指導課は「小学生から、目標を持って自分の進路を決めるよう丁寧に指導している。詳細は把握していないが偏差値を出していたとしても、以前のように偏差値での(進路先の)振り分けにはならないと考える」としている。
文部科学省は「公的テストについては把握していない」、東京・神奈川・千葉の各教育委員会は「中間や期末テストなど日々の学習状況を基に進路指導している」と話している。