2010年12月25日 11時22分
【ソウル西脇真一】中国漁船が黄海で韓国海洋警察庁の警備艇に体当たりして転覆した事件で、韓国検察当局は25日、身柄拘束していた機関長ら乗組員3人を不起訴処分とし、釈放した。同日中に帰国する見通し。18日の発生から1週間での急展開の背景には、「円満な解決」(韓国外交通商省)を望む中韓両政府の意向が反映された可能性がある。聯合ニュースが伝えた。
海洋警察や検察は当初、公務執行妨害容疑で本格的な取り調べに入る方針だった。海洋警察は「操船は死亡した船長が行っており、拘束した乗組員が関与した可能性は薄い」などと説明している。
取り締まりにあたった海洋警察官4人が鉄パイプなどによる抵抗を受けて負傷したが、暴力を振るった乗組員は別の漁船の船員で既に逃走している。
事件は18日午後発生。中西部・群山沖合の黄海で、中国漁船団が韓国の排他的経済水域(EEZ)内に入り込み違法操業しているのを海洋警察庁が発見。警備艇が取り締まろうとしたところ、漁船1隻が警備艇に体当たりしたはずみで転覆、沈没し10人の乗組員全員が海に投げ出され、1人が死亡、1人が行方不明になった。
韓国捜査当局は「レーダーの記録など違法操業の証拠は確保している」と立件に自信を見せていたが、韓国政府としては北朝鮮問題をめぐり中韓関係がぎくしゃくするなかでこれ以上、中国とトラブルを抱えたくないのが本音だった。
中国外務省は韓国側に損害賠償を求めるなど抗議の姿勢を見せて韓国世論の反発を買っていたが、韓国政府関係者は「中国の抗議は国内向けだろう。経緯を説明しても中国側は反論もしなかった」と明かす。韓国外交通商省は事件処理について「両国は円満な処理のため緊密に協議するという認識を共有している」と繰り返していた。