2010年12月24日 21時36分 更新:12月24日 21時43分
民主党政権が初めて、編成の全段階を手がけた11年度予算案。だが、子ども手当の上積み分や基礎年金国庫負担などの財源探しに追われ、菅直人首相の掲げる「経済、財政、社会保障の一体改革」を実現したとは言い難い内容となった。与野党が逆転するねじれ国会の下で予算案の成立も危うい状況で、政権の行き詰まり感は色濃くなっている。
「経済成長と財政規律の両立をぎりぎりのところで図ったが、予算編成の困難さは昨年以上だった」。予算案を閣議決定した後の会見で、野田佳彦財務相は疲れた表情で編成作業を振り返った。
長引くデフレや円高で、日本経済の停滞感が強まる中、菅首相は11年度予算案を「民主党政権として正念場となる本格予算」と位置づけていた。だが、編成作業は、財源不足をどう賄うかに終始。象徴的だったのが、民主党の目玉政策である子ども手当の増額問題だ。
衆院選マニフェスト(政権公約)では、11年度から満額(月2万6000円)を支給するとしていた。しかし、2.7兆円に達する財源捻出のメドが立たず、断念に追い込まれた。3歳未満のみ7000円上積みすることにしたものの、当初予定していた配偶者控除の縮小に対し、統一地方選への影響を恐れる民主党が猛反発。2500億円の財源確保ですら最後まで迷走した。高速道路料金の割引予算も微増にとどまり、公約の「無料化」とはほど遠い結果に。財源の壁を前に、マニフェストはほぼ全面後退を余儀なくされた。
限られた財源の中、政府は「予算の大幅組み替え」で、菅政権の看板である成長戦略への重点配分を目指した。省庁に既存の予算を一律1割削減させ、浮いた財源を成長戦略に振り向ける「特別枠」を創設。優先順位の高い政策に予算を組み替えることで財源の壁を突破しようと試みた。
だが、防衛省や文部科学省など人件費が大半を占める省庁では、1割の経費削減に抵抗。結局は2.1兆円の特別枠に、教員人件費や在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)など従来通りの経費が入り込み、「組み替え」は限定的なものにとどまった。
マニフェストや成長戦略への予算組み替えが進まない背景には、国の歳出構造が硬直化していることがある。社会保障費は、高齢化に伴う医療費などの増加で、11年度は前年度比1.4兆円増の28.7兆円にまで膨張。消費税を含む抜本的な税制改革抜きでは、毎年1兆円余り増える社会保障費を、他の予算削減で吸収していかなくてはならない。だが、「成長戦略、教育、環境など投資しなくてはならない分野は多く、削り込みには限界がある」(財務省幹部)のが実情だ。
政府は11年半ばまでに社会保障と消費税を含む税制の抜本改革に向けた具体案を作り、12年度にも実行に移す構え。一方「支持率低迷で求心力が低下する首相が実現できるのか」(民主党中堅議員)と懐疑的な見方も強く、閉塞(へいそく)状況を打破できる見通しは立っていない。【坂井隆之】