2010年12月24日 12時14分 更新:12月24日 13時34分
国際テロの捜査資料がインターネットに流出して2カ月近く。警視庁が24日、事実上の内部文書であることを初めて認めた。ネット上に流された文書には、イスラム教徒を中心に捜査に協力した人や監視対象者らの氏名のほか、普段の生活の様子など詳細な個人情報も含まれている。これまで「内部文書かどうかは調査中」と繰り返してきた警視庁。幹部はこの日の会見で、苦渋の表情を浮かべて謝罪したうえで「(被害者への)取り組みを誠心誠意やっていく」と述べたが、イスラム教徒らからは「今さら遅すぎる」との不満が漏れた。【前谷宏、伊澤拓也】
「データがネット上に掲出されたことにより、不安や迷惑を感じる方がいる事態に至ったことは極めて遺憾で申し訳なく思います」。警視庁の桜沢健一警務部参事官はこう述べた後、約5秒にわたって頭を下げた。
流出が発覚後、警視庁は内部文書の可能性も視野に入れて調査し、「調査中」という立場を続けてきた。この日の会見でも、「警視庁内にデータと同一のものは存在しない」「経緯はいまだ明らかになっていない」と約70人の報道陣に繰り返した。だが、約380人の捜査員の聞き取り結果から、文書内容は内部文書の可能性が高いことを認めた。「国民の関心が高い事案であることを報道を通じても厳しく感じ、説明責任を果たす必要があると判断した」とも述べ、情報管理が甘かった実態も明らかにした。
「認めるべきか認めざるべきか」。警察内部ではさまざまな意見があった。ネットに掲示された114の文書には、外事3課内の担当や人数を記した体制表や「国際テロリズム緊急展開班班員名簿」、会議や出張の記録なども含まれていた。一見して警察の内部資料とみられる文書が多く、「一部だけでも早々に認めるべきだ」との意見もあったという。
米連邦捜査局(FBI)の要請に基づく聴取記録や在日米軍の爆発物研修に関する報告や、在日イラン大使館員の口座記録など国際的な問題が懸念される文書も掲示された。モスク参加者の視察・尾行といった記録については、捜査関係者から「日本人がすべてのイスラム教徒を敵視しているとの誤ったメッセージになりかねない」と危惧する声もあった。
警視庁は「犯人が特定できないまま内部資料と認めることは難しい」と考え、内部調査を進めたが難航。3日には通信記録を差し押さえるため、容疑者不詳のまま、偽計業務妨害容疑で強制捜査に着手。24日にようやく中間報告を発表されるまで、個人情報がさらされたイスラム教徒は蚊帳の外に置かれた。