第109回
規律のユーロ、タガ外れの円・ドル
経営コンサルタント 大前 研一氏
2007年12月26日
ドルや円が国際経済の中で衰微しつつある一方で、強さを見せつけているのがユーロである。そしてユーロ導入国の経済も非常に好調だ。今年(2007年)は、ユーロ圏13カ国すべてが安定成長協定違反を解消する見込みである。つまり、どの国も財政赤字がGDP比で3%以下ということだ。
これは米国や日本が膨大な赤字を抱えているのと実に好対象である。余談だが、現在はキプロスとマルタもユーロ導入に向けて動いている。この2国が参加すれば、EU参加国25のうちユーロ導入国は15カ国になる。
では、なぜユーロは強くなったのか、どうしてユーロ導入国はこれほどまでに経済が好調なのか。あるいは、ドルと円が弱くなったのは、何が原因なのか。ユーロとの違いはどこにあったのか。一言でその要因を表すならば「ユーロにはきちんとタガがはまっていた」ためである。つまり、しっかりとしたルールが定められ、皆が規律を守るということだ。
ユーロのルールとはどのようなものだったのか。それをまとめたのが下の図だ。
ユーロ導入の条件
最初の「財政赤字がGDPの3%以下」などという条件を見ただけで、「ああ、我が日本は、とても導入することはできないのだ」と嘆きたくなる。日本の場合、国債を毎年30兆、40兆円と発行している。これではどうしようもないではないか。ほかにも、物価上昇率・為替・金利でも、日本から見たら非常に厳しい条件が付けられている。もちろん過去の10年はインフレも金利も低かったので問題はないのだが、それはたまたま景気が悪かっただけで、日本の財政赤字やマネーサプライには規律がまるでない。ユーロ参加の条件は輪転機や国債印刷機を野放図に回す日本にとっても米国にとっても厳しいものなのだ。
しかし、この厳しい条件こそがユーロの強さの秘密ともいえるのだ。リングの外にこのような杭がしっかり打ってあるからこそ、規律ある国家運営、経済施策ができているわけだ。
もしこの条件に従わなかったらどうなるのか。その国は共通通貨ユーロに加盟していられなくなるのだ。ひとたびユーロに参加していた国が規律を守らないという理由で追放されて昔の自国通貨に戻ったらどうなるか。考えるまでもなくその国の通貨は信頼されないだろうし、国際市場では売り浴びせられる。経済が大混乱になることは目に見えている。
よしんばユーロに残ったとしても、ルールを逸脱したインフレ率などを記録すれば、翌年に印刷できるお札の枚数(ユーロ発行額)をその分減らされてしまう。このように非常にシリアスなペナルティが課せられる仕組みになっているのがマーストリヒトで合意された共通通貨ユーロの仕組みなのである。ここが国内事情で自由に通貨を発行し、また将来からの借金である赤字国債を垂れ流している米国、そして我が日本との大きな違いなのである。
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