インドネシア特使団機密盗難:「完璧な失敗事例」(上)

情報専門家「非常に大きな作戦失敗」

情報機関による情報収集、国益のために必要だが慎重さが必要

 安全保障問題の専門家、米紙ニューヨーク・タイムズのワイナー記者が執筆した『灰の遺産 CIAの歴史』によると、アイゼンハワー大統領は情報機関の役割について「吐き気がするが、しかし必要なこと」と述べたという。情報機関の仕事は、国益のためには絶対に必要なことだが、同時に絶対に外に知られてはならない。「陰地で働き陽地を目指す」という国家情報院のスローガンにも、このような意味合いが含まれている。

 このたび韓国で国家情報院の担当者が、インドネシア大統領特使の宿泊する部屋に無断で侵入した事実が発覚した。これは絶対に陽地に現れてはならない事件だ。ところが国情院の要員らは、情報機関で働く者として基本中の基本さえ守らなかった。陰地で行う仕事が世の中に知られた場合のリスクや国家的損失を理解し、責任感を持って任務に当たらなければならない要員らが、あまりにも初歩的で愚かなミスを犯したのだ。

 スパイの語源は「外を見詰める」あるいは「隠された事実を発見する」という意味合いの古代フランス語「espire」から来ている。しかし国情院所属の要員らは今回、外を監視する情報作戦の基本的な鉄則を守らなかった。警察の情報収集担当者は「盗みを働くときには網の目を把握しなければならない。ところが国情院に所属する要員は、3人もいながら相手の動きを把握しようとしなかった。これはある意味不思議なことだ」と語る。別の情報筋は「国情院に所属する人間が、他国の特使が宿泊する部屋でその特使と鉢合わせすることなど考えられない」と述べた。特使など関係者全員が部屋(ロッテホテル19階)を立ち去ったのか、あるいは誰かが残っているのかを把握することは、情報機関で働く人間にとっては「基本中の基本」のはずだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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