2010年12月27日

リバネスが健康食品を販売していることに関して:その3「国からの委託・補助の状況(調査進行中)」

株式会社リバネスが科学的根拠も示さずに健康食品を販売している件に関して追求するシリーズ「リバネスが健康食品を販売していることに関して」の第3弾です。現在までの調査状況を中心に書きます。

#ちなみに今後、「総論」「ウコン編」「しじみ編」「味噌編」「国からの業務委託・補助金編」「学歴ロンダリング編」「まとめ」と続く予定です。本件につきましては国や、科学的アプローチによるマーケティング手法の専門家へのヒアリングを含め、その正当性について徹底的に追求していく予定です。


関連エントリー
その1「どうしてこうなったんだろう?」

その2「リバネス批判」


現在の調査状況
現在までに、リバネス社が関連しそうな各省庁(内閣府(消費者庁含む)、総務省、文部科学省、農林水産省、厚生労働省、経済産業省(中小企業庁含む))へ、次のような主旨の連絡を入れて情報提供をお願いしています。

1.リバネス社はリバネスショップという同社運営のネットショップを通じ、ウコン、しじみ、味噌、ブルーベリー(βカロテン)を販売している。

2.その際、サイトにおいてそれらの素材の有効性についての科学的根拠が示されていない。

3.丸リバネス社長はツイッター上でこの事業が国からの委託事業であると述べている。

4.この販売方法が国からの委託事業の一環であるならば、その販売手法には大きな疑問がある。

5.このことから、まずはどの役所からの委託事業なのかを調査中である。ここ数年内に同社への委託事業、あるいは補助事業があった場合、それらの担当部課名および担当者をお知らせ願いたい。


参考:菊池誠氏の呈した疑問に対して「国の委託事業である」「マーケティングを担当」と述べる丸リバネス代表取締役CEO
maru


これに対し、本日までに総務省(該当案件なしと回答)、経済産業省(産業技術環境局大学連携推進課に8件、経済産業局産業人材政策室1件、中小企業庁新事業促進課1件が存在すると回答)の回答が得られています。資料を当たってみたところ、おそらく丸社長が国からの委託と述べた案件は下記が該当すると考えられます(実際にはこれは委託事業ではなく、補助事業です)。

事業名:沖縄県産ウコンと日本各地の特産物を用いた加工食品の開発・製造・販売

本リンク先の資料によりますと、リバネス社は「科学的エビデンス」をもとにマーケティングを展開すると記載されていますが、その科学的エビデンスが現在まで見つかっていない状況です。現在問題になっているのは、まさしく科学的エビデンスが希薄なマーケティング手法であり、その点については中小企業庁新事業促進課に対し、補助事業としての妥当性についてヒアリングを予定しています。もし担当者が現在のマーケティング手法が国からの補助事業として妥当性に欠けると判断するようであれば、きちんとした指導をするように要請する予定です。


国からの委託、補助事業の選定先としての妥当性
中小企業庁新事業促進課の他にも、リバネス社へ業務委託、あるいは補助事業を展開している役所がありますので、これらの担当者に対しましても、それらの事業の選定先として適切なのかどうか、担当者に対してヒアリングを実施していく予定です。


リバネスショップのマーケティング手法
リバネスショップではウコンについて「日本国内でも有数の長寿地域として知られる沖縄県で栽培されたウコン」と紹介していますが、同社が販売している製品で利用されているシジミは、日本では男女ともに最も平均寿命が短い青森県(厚生労働省老健局老人保健課データ)、十三湖産のシジミです。これが最も典型的ではありますが、リバネスショップにおけるマーケティングは全く科学的でなく、また、科学的エビデンスも一切示されていません。

参考:現在の記述その1
ukontoshijimi


参考:現在の記述その2
ukonsijimimiso


にも関わらず、同社はリバネスショップがサイエンスにこだわっていると主張を続けています。

参考:リバネスのツイッターより
kodawari



ウコン、シジミ、味噌に関する論文
ウコン、シジミ、味噌に関する論文はこちらでざっくりとタイトルが見つかります。

ウコン

シジミ

味噌

リバネス社が科学的エビデンスを標榜するのであれば、最低でもこれらの論文の中のどれが根拠となっているのかを示すのが当然ですが、現在まで、そういった記述、言及は見つかっていません。


βカロテンサプリメントの危険性について
また、βカロテンについても現在調査を進めておりますが、βカロテン(βカロチン)については頻繁に言及されている以下の論文があります。
Use of antioxidant vitamins for the prevention of cardiovascular disease: meta-analysis of randomised trials.
Vivekananthan DP, Penn MS, Sapp SK, Hsu A, Topol EJ.
Department of Cardiovascular Medicine, Cleveland Clinic Foundation, Cleveland, OH 44195, USA.

出典:PubMed:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12814711

この論文ではビタミンEおよびβカロテンの服用に関する影響について述べていますが、βカロテンについては、対象者13万8千人以上への投与実験により、投与によって死亡率がアップするという結論を出しています。「科学的なエビデンス」を標榜するのであれば、当然この論文に対して何らかの実験及び論文の発表があってしかるべきですが、リバネス社からそのようなアクティビティがあった痕跡は今のところ見つかっていません。こちらにつきましても、今後、さらなる調査を進めた上で、本特集で取り上げいく予定です。

なお、現在のリバネスショップにおけるビルベリー(ブルーベリー)に関する記述は以下のように、全く科学に言及していません(詳細はβカロテン編で言及を予定)。

blueberry


挙句、「商品の詳しい説明はファーベリー社ホームページを御覧ください。」と丸投げする始末です(そして、そのサイトにも科学的なことは記述されていません。科学者が関与しているらしいことはわかります。もちろん、そのことに科学的な意味はありません)。

beta



以上、現在までにわかっていることについて駆け足でまとめました。近日中に第4弾として「総論」を発表し、年明けから各論に入っていく予定です。

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メーリングリストで元木さん自らブログ記事を紹介しておられました. 「近日中に第4弾として「総論」を発表し、年明けから各論に入っていく 予定」とのことです. リバネスが健康食品を販売販売していることに関して:その3「国からの委託・補助の状況(調査進行中)」(...
【話題】「ウコンやしじみで酒に強くなるわけねーだろバーカ」社長のブログ  リバネスの健康食品事業について取り上げる【Science and Communication】at 2010年12月27日 20:46
この記事へのコメント
ブログ主はご存知でしょうが、ウコンとβカロテンについては健康に対してポジティブなエビデンスは皆無ですが、ネガティブなエビデンスは山ほどあります。シジミはポジネガ両方共ほとんど見た記憶がありません。
Posted by MLより at 2010年12月28日 09:27
> ブログ主はご存知でしょうが、ウコンとβカロテンについては健康に対してポジティブなエビデンスは皆無ですが、ネガティブなエビデンスは山ほどあります。

逆じゃないと困るんですが(笑)

> シジミはポジネガ両方共ほとんど見た記憶がありません。

シジミに関する論文は確かに見当たりませんね。リバネスは当初リバネスショップ上で「肝臓に良い健康食品として注目されるしじみ」と記載していましたが、僕の指摘後、こっそりと「国産しじみ」に書き換えました。書き換えなくて良いからエビデンスを出せよ、という話です。「何もありませんでした。嘘でした」というのなら、責任者出てこい、ということで。このあたりもあとで中小企業庁に質問してみます。
Posted by buu* at 2010年12月28日 09:44
科学教育の会社が博士の肩書きを利用して健康食品を販売するというのは自己否定。社長、担当役員は辞任が相当。
Posted by Tetsu at 2010年12月28日 12:05
> 科学教育の会社が博士の肩書きを利用して健康食品を販売するというのは自己否定。

いや、きっと科学的根拠があるんだと思いますから、それをきちんと出してください、ということです。βカロテンについては2003年に13万人を対象とした栄養疫学的な論文があるわけですから、それに対抗できるだけのデータがあってしかるべきです。件の補助金申請書類には「アメリカで販売」という文字もあるわけですが(対象製品はウコンですが)、今のままでβカロテンを米国で販売したらどうなることやら。ウコンも同様です。ちょっと調べただけでもウコンによる健康被害に関する論文はたくさん見つかります。それに対して、「この濃度なら安全、かつ効果が期待できる」というエビデンスが必要なはず。シジミも、単に「肝臓に良い健康食品」などと書くのではなく、どういう根拠で体に良いのかを提示していただかないと。論文があればなんでもオッケーではありませんが、最低でも論文があるのが「科学」です。つまり、必要条件。今のリバネスショップはそれを満たしていません。

> 社長、担当役員は辞任が相当。

もし、エビデンスがないなら、ということですが、仮定の話で民間企業の役員の進退に言及するのは不適切だと思うので、現時点では私見の表明を控えます。
Posted by buu* at 2010年12月28日 12:43
ところでこの会社がインチキ会社なのは良くわかるのですが、こんなことは大企業でも良く見かけます。なぜここまで追求するのでしょうか。
Posted by MLより at 2010年12月28日 13:49
この会社、何か適当で、学生みたいなノリが気になっていたので、これはとても為になるリポートだと思います。よく観察してみると眉唾健康食品会社に近い感じなのですね。
気を付けます( ̄◇ ̄;)
Posted by asd at 2010年12月30日 10:24
> この会社、何か適当で、学生みたいなノリが気になっていたので、これはとても為になるリポートだと思います。よく観察してみると眉唾健康食品会社に近い感じなのですね。
> 気を付けます( ̄◇ ̄;)

えっとですね、良いこともやってるんですよ。でも、この件で全て台無しになりかねません。サイエンスをやっている人間ならこんなやり方がまずいことはすぐにわかります。実際、僕のブログのタイトルが「コラーゲン食って肌がぷりぷりになるわけねーだろ」というタイトルだったとき、リバネスショップの担当取締役である吉田さんは「その通り」って言ってたんですから。それがなぜこんなことを始めたのか。また、僕が指摘した時点ですぐに辞めることができないのか、ということです。逆に言えば、こんなことをやらざるを得ない経営状態だ、ということなんでしょうね。残念なことです。
Posted by buu* at 2010年12月30日 13:05
> ところでこの会社がインチキ会社なのは良くわかるのですが、こんなことは大企業でも良く見かけます。なぜここまで追求するのでしょうか。

この会社は、その黎明期に僕自身が財務省から取ってきた予算を、僕が選んで補助した会社です。僕はもう役人ではありませんから限界はありますが、きちんとそのお金がどういう成果をあげたのかを見ておく必要があるし、何か問題があるなら、それを指摘していく義務があると考えています。

この会社だけではなく、他の組織も同様です。今、どうなっているのかわからないものも少なくありませんが、例えばバイオインフォマティクス技術認定試験なども同じ予算から派生したもので、その妥当性についてはいつもウォッチしています。
Posted by buu* at 2010年12月30日 13:12