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支局長評論:下関 人ごとではない /山口

 鹿児島、宮崎県境の霧島山系・新燃岳(しんもえだけ)噴火で降り注ぐ灰。鹿児島県大隅半島にある鹿屋通信部(鹿屋市)に勤務した4年間、桜島の降灰に閉口した。外で洗濯物を干せないし、灰は窓やドアのすき間から家に入り、室内はザラザラ。車もアッという間に灰まみれ。一日の仕事は、その日の風向きに左右された。

 でも、宮崎県都城市など一帯に降る新燃岳の灰は、私が体験した量とは比較にはならない。灰を放置しておくと、雨水を含んで固くなり、排水溝などが詰まる。健康にも良くない。家族や近所に若者がいれば心強いが、独居の高齢者に灰の清掃は難しい。もし熊本の実家に灰が降れば、お手上げだ。家を守る81歳の母は屋根になど登れない。人ごとではない。

 宇部市の常盤公園で、死んだ飼育コクチョウから高病原性鳥インフルエンザウイルスが見つかり、約340羽が殺処分された。いたたまれなかった。鳥インフルエンザはどこか遠い所の出来事と思っていた。でも、身近で起きた現実。捕獲、殺処分にあたった市や県の職員もつらかったに違いない。下関で、いつ発生してもおかしくない。人ごとではない。

 反捕鯨団体シー・シェパードの妨害行為で、政府は安全を第一に南極海での調査捕鯨を打ち切った。下関港からは昨年末に2隻が出港していた。下関には乗員の家族を含め、鯨に関わる産業で生計を立てている人たちも多い。人ごとではない。

 鳩山由紀夫前首相の「方便」発言や衆院議員16人が会派離脱届を出し、ごたごたが続く民主党。有権者が議員や民主に投じた1票は、国会で党内抗争をするためのものでは、ない。民主への票には「高齢者や弱者に、より優しい政治を」「早い景気回復を」など切実な思いが込められていたはず。なのに今の彼らに庶民の生活苦は、人ごとなのか。政治家を志した時の原点に戻るべきだ。<下関・三嶋祐一郎>

〔下関版〕

毎日新聞 2011年2月21日 地方版

 
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