[2010年07月01日(木)]
ジーコが語るW杯「アフリカ勢に落胆。韓国はすばらしい」
田崎健太●取材・文 text by Tazaki Kenta
photo by Yanagawa Go
今回のW杯は、史上初めて開催国がグループリーグを突破できない大会となった。アフリカ大陸で開催されながら、アフリカ勢は大きく期待を裏切った形となった。
ジーコもアフリカ勢の試合ぶりには落胆したという。
「躍進を期待していただけにがっかりしたのが、コートジボワール。選手個人の力を見ると、ポテンシャルのあるチームだったが、あっけなく敗退した。カメルーンにも失望させられた。
皮肉だったのは、アフリカ勢で最も個の力が劣る南アフリカが健闘したこと。あのチームにはドログバやエトーのように知名度のある選手は誰もいないにもかかわらず、パレイラ監督のもと、連携のとれたチームだった。運に見放されてグループリーグ突破ができなかったのは残念だ」
かつてアトランタ五輪でナイジェリアが優勝し、W杯でもアフリカの時代が来ると言われた時期もあった。アフリカ大陸で最初のW杯で、逆の結果を残すことになったのは皮肉である。
アフリカ勢と対照的に、アジア勢の日本と韓国がベスト16に進出した。
ジーコは大会前から、韓国がグループリーグを勝ち抜くことを予想していた。
「大会前に日本と対戦した試合を見たときから、注目をしていた。パク・チソンというひとりの才能ある選手を中心に、すばらしいサッカーをしていた。
アルゼンチン、ナイジェリアという強豪国と同じ組に入っていたが、韓国のグループリーグ突破は疑っていなかった。決勝トーナメント一回戦でも、ウルグアイに勝ってもおかしくなかった。胸を張って大会を後にしていい」
現在、ほとんどの国の情報はあらかじめ手に入れることができる。サッカーの世界でサプライズという言葉はもはやありえないとジーコは考えている。つまり、フランスやイタリアの敗退は、予想できた結果だったという。
「大会前から両チームとも調子が悪かった。特にフランスは、欧州予選でもひどい戦いで、大会出場に値しなかった。イタリアもコンディションが悪かった。彼らがW杯でいい試合を見せることができなかったのは、何ら驚きではないよ」
この大会で、唯一サプライズに近いものといえば、ドイツの戦いぶりだという。
「W杯で初めて、エジルという選手の存在を知った。魅了されたね、こんなすごい選手がいるなんて知らなかったんだ。ドイツの変化は、このエジルが入ったこと、そしてシュバインシュタイガーが自由に動くようになったこと。バラックがいないことで、結果としてシュバインシュタイガーの持っていた才能が生かされることになった。
もっとも個人的に、彼のことは応援できない。4年前、加地に対してあんなプレイをした奴だからね(シュバインシュタイガーのファウルで加地は負傷)。あれは不必要なプレイだった。それを抜きにすれば、素晴らしいパフォーマンスを見せていると言えるだろう」
ジーコがこの大会でエジルともうひとり評価している選手は、アルゼンチンのメッシ――準々決勝でこのふたりがぶつかることになる。
「どちらかが大会からいなくなるのは、ちょっと残念な気がするよ」
いよいよW杯も佳境に入る――。